「慰めの応酬」ブレイン・ゲーム 白石黒井さんの映画レビュー(感想・評価)
慰めの応酬
いやーアンソニーホプキンス演じるジョンが娘を安楽死させていたとは思わなかった。ただ色々考えると納得させられる良い映画だった。
犯人のチャールズがあんまりバックボーンや人間味を感じさせられない様に撮られているので、これはチャールズは何かの暗喩として位置付けられているなと思った。
・ジョンが娘を殺めてしまった事への罪悪感
・安楽死を肯定したいジョンの心の声 etc・・・
考えてみるとジョンとチャールズは凄い似ている。趣味や能力、銃を出すタイミング、ポーカーフェイス等々、但し死生観だけが相反して描かれている。多分チャールズはジョンにとっての心の影みたいな存在だったんじゃないかなぁと思う。
若しくはチャールズは超能力の未来視でジョンの存在を知ったけど、何か罪の意識を持っていると感じ取り、同胞のよしみからジョンが過去を振り返り前に進んでいける様に、罪の「慰め」の一助をしてあげようとした存在だったのかもしれないかな。
ジョンは、最終的にチャールズ(ジョンの心の影)に従って、娘の面影を寄せてしまっている婦警を庇い、チャールズを殺してしまう。この時、ジョンは誰かを殺してでも娘の安寧を守るという決断は変えることが出来ない、いくら過去に戻っても同じ決断をしたであろうと気付いたのかも。娘の苦しみを取り除くためには、どれだけ罪悪感が残ろうとも、自分の心の声を殺してでも実行してしまう性格なのだと。
安楽死等の死生観について観客に考えて欲しいと撮られたものかなぁと最初思ったけど、これはその先の事を描写しているんじゃないかなと鑑賞後に感じた。安楽死を選べる立場の人間が、その人の為を思って決断するが、結局は自分の選択に罪悪感を持って生きていくしかないという残酷な運命を表現しているのかと。そして、この映画はその残酷な選択をした人物に、「幾ら過去に戻っても貴方は同じ決断をした」と、そう思わせてくれる慰めの一助になれる様に撮られたのではないかと感じた。
ジョンが犯人を追っている最中に、相手が同じ超能力者だと気付いた瞬間直ぐに現場から出て行こうとするの、今考えたら納得いくなぁ。相手が超能力者だというのなら、娘を殺してしまったのだという知られたくない過去を見られているのだと気付いたから。今までは他人の過去を見ていたのに、いきなり自分の過去が丸裸にされそうになったのだから、そりゃ怖いだろうなぁ。婦警に対して八つ当たりもしちゃうよ。
あっさり見れるけど、考えてみたら色々と考察のしがいがある良い映画でした。