劇場公開日 2015年12月5日

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「人々の真心が世界を動かす」海難1890 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人々の真心が世界を動かす

2015年12月10日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

知的

幸せ

この冬ちょっとした競作となった日本と外国の国交を描いた歴史物語。
元々知っていた「杉原千畝」の方に期待していたが、意外にもこちらの方に見応えあり。

1890年、トルコの軍艦エルトゥールル号が天皇への謁見の帰途で嵐に遭い、和歌山県沖で沈没、地元住民に助けられる。
1985年、イランとイラク間の戦争で多くの日本人がテヘランに取り残される中、トルコが救いの手を差し伸べる。

二つの時代が前半後半でそれぞれ展開。
まず、エルトゥールル号海難事故編。
元々この出来事が本作製作のきっかけであり、日本とトルコの友好の始まりだけあって非常に力を入れているのが分かる。
美術セットや遭難~救出、2か国のキャストなどスケール充分の歴史大作。
その昔、少々似た内容の「おろしや国酔夢譚」という邦画があったが、同じ印象を受けた。
グローバル社会となった現代こそ遠い異国の者同士が交わる事は少なくないが、そんな出会いがこういう出来事でも無い限り皆無と言っていい時代。
片や全く見知らぬ地での怪我、疲労、絶望。
片や突然現れた聞いた事も無い言葉の異国人。
不安や怪訝は計り知れないが、それ以上に人を突き動かすのは、困っている人、苦しんでいる人、助けを求める人への無償の献身。
異国の地で受けた優しさと温もり、金や恩を顧みない真心は、国や言葉を超えた。

テヘラン邦人救出劇。
忽那汐里やトルコ人俳優ケナン・エジェらが二役で演じ、臨場感ある社会派ドラマ風となっているが、時間も見せ場も前半に持っていかれた感あり。
しかし、こちらはこちらで見るべきものがあった。
実は、ほとんど接点が無いと言っていい前半の海難事故と後半の救出劇。
かえってこれが良かったようにも感じた。
あの時の恩を今返す時!…というあざとい展開にならず、海難事故の時と同様、困っている人、助けを求める人に無償で救いの手を差し伸べる。
95年も前の話なので、かつての海難事故を知っている人は少ない。
が、あの時と変わらぬ両国間の友好・精神は時を超えて受け継がれていた。

「人々の真心が世界を動かす」
政治レベルでの国と国の関係では何かと難しい問題が多い昨今。
国は違えど人と人同士が感じるもの、受けるもの、与えるものは一緒。

長いと一部で言われているが、不思議とそれほど長さを感じなかった。
エンドクレジット流れても席を立たぬように。
エンドクレジット後に思わぬ人物から祝辞が。

近大