劇場公開日 2014年7月19日

「憧れよりも共感を生むジブリの新ヒロイン」思い出のマーニー ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0憧れよりも共感を生むジブリの新ヒロイン

2014年7月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

これまでのジブリのヒロインといえば天真爛漫、好奇心旺盛、芯が強いといったイメージがある。観客はそんなヒロインに共感よりも憧れを抱いていたのではないだろうか?

その点、今作「思い出のマーニー」の杏奈はこれまでのジブリのヒロインとは違う。周囲の人と打ち解けられず、自分への憎しみや苛立ちが募り、苦悩する。天真爛漫とはほど遠いそのヒロインに抱く思いは憧れよりも共感である。

そんな杏奈はぜんそくの療養のために訪れた田舎町で不思議な少女マーニーと出会い、次第に自分の胸の内を開いていく。夜のピクニック、月夜のダンス、2人で漕いだボート、すべてのシーンが美しい映像と共に幻想的に描かれる。自分が辛いとき、苦しいとき、マーニーのような友人がそばにいてくれたらどんなに心の支えになるだろうか。

物語はやがてマーニーが何者なのかという方向にシフトし、マーニー自身の心の闇にも踏み込んでいく。夢と現実を巧みに交差させながら展開するこのミステリーは実に切ない。

私たちは多くの人と関わって生きていく。それと同時に多くのコンプレックスも抱えて生きていかなくてはならない。そんなコンプレックスを受け入れてくれる人と出会えたのなら、少しだけ前向きに生きれるのではないだろうか?

杏奈は魔法も使えなければ、芯も強くない。しかし、繊細すぎるほどのデリケートな心こそが杏奈の魅力であり、ジブリのヒロイン像に新たな風を吹き込んでいる。

Ao-aO