劇場公開日 2014年9月20日

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バツイチは恋のはじまり : 映画評論・批評

2014年9月16日更新

2014年9月20日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほかにてロードショー

美人女優クルーガーがなりふり構わず“押し”の演技で突っ走るラブコメ

先祖代々伝わる「一度目の結婚は必ず失敗する」という呪縛霊のようなジンクスを振り払うどころか、自分にとって満点の彼氏との結婚を成就させるために、あえてバツイチになるべく“離婚相手”を探して旅に出る女。何と言いう身勝手!! 何と言いう消極性!! いくらウソをホントらしく見せるのがラブコメの極意とは言いえ、そんな設定が許されるだろうか!?

許されるでしょう? 許されるはず! そう信じて疑わないフランス映画界きってのヒットメーカーたちが、まずは話の入口で生じた無理を旅映画の展開力でカバー。主人公のイザベラがデンマーク行きの機内で知り合ったお人好しの旅行ガイド編集者、ジャン=イヴに狙いを定め、ケニア→モスクワ→パリ→モスクワと目まぐるしく地球半周する旅程に密着して行く。旅の途中で2人が体験するライオンとの遭遇や急降下無重力飛行などなど、オプショナルツアー的な刺激を挟みつつ。

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問題は、イザベルがジャン=イヴと出会った時点で早々にオチがバレてしまう点だが、それも俳優の魅力と努力でぎりぎりクリア。ジャン=イヴ役のダニー・ブーンが、パリでイザベルの帰りを待つセレブなフィアンセとは対極にあるスローで不器用な中年男を“引き”の演技で造形する一方、勝ち気でわがままなイザベルに扮したダイアン・クルーガーが全編"押し"の演技で突っ走る。彼女がシャネルのイメージモデルとしての気取りを取り払い、際どい下着姿にサンダル履きでキャリア初のコメディエンヌになり切ろうとしている姿が、最大の見どころと言ってもいいほどだ。

考えてみたら、昨今のハリウッドではバジェットの格差が開き過ぎて、中規模のラブコメもコメディエンヌも衰退の一途。かつて、コメディエンヌとして史上最高のギャラを獲ったリース・ウィザースプーンが最後に出演したラブコメは、笑いよりアクションに特化した若者向け映画「Black & White/ブラック&ホワイト」だった気が。そう考えると、ヨーロッパ映画を代表する美人女優にラブコメの成否を託した本作は、少なくとも最近のハリウッド映画より映画愛に満ち、チャレンジングな1本になっている。

清藤秀人

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