劇場公開日 2014年3月29日

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「何気ない一言の重みを思い知る」白ゆき姫殺人事件 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0何気ない一言の重みを思い知る

2014年4月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

難しい

ネットやマスコミによって個人の人生が
歪められていく……というテーマは
今や珍しくないテーマではあるけれど、
ツイッター等のソーシャルメディアを通して
それが語られる所が本作の新味。

色んな人物の視点から事件が語られる形式や、
犯人探し調サスペンスの面白さもあり、
エンタメサスペンスとしても風刺モノとしても
しっかり楽しむことができた。

* * *

「顔を見せずに発言できる」というだけで
人間これだけ無責任になれるものか……と
愕然としてしまうと同時に、
ツイッター等の登場によってその無責任さや
“人格破壊”のスピードがますます増して
しまっている点にも戦慄させられる。

まあ現実のネット発言の方がこの映画より
ムゴい事が書かれていると思うが、
エンタメとして表現をマイルドにするなら
これくらいが妥当なのかしら。
(その辺の辛辣さがやや足りない気もする)

* * *

井上真央は演技が上手いのか下手なのか
僕はイマイチ計り兼ねているのだが、
この“フツウ”な雰囲気は役にドンピシャ。

綾野剛も、吹いたら飛んでいきそうな
くらいに薄っぺらい思考のADを好(?)演。
この役演るの、イヤだったんじゃないかなあ(笑)。

まあそれを言ったら菜々緒演じるOLなんて
容姿も含めて役にハマり過ぎてたから
もっとイヤだったかもしれない(笑)。
皆さん、リスキーな役、お疲れ様でした。

* * *

さて、
あの軽薄ADみたいなラーメン批評を書く
人間が世の中にどれくらいいるかは知らないが、
例えば「まずい.ダシがなってない.☆一つ」
だなんて、一生懸命ラーメン作った本人の
目の前で同じこと言えんのかよと思う。

常々思うが、人や人の手掛けたものへの
評価を軽はずみに口にするべきじゃない。
ましてやネット上の発言なんて、
よほどの覚悟を持って書くべきだ。
自分の言葉が誰かを傷付けているかも、
誰かの人生を破壊しているかもと
常に疑いながら書くべきだ。

そうエラそうに語る自分自身、
こうしてレビューを投稿している以上は
同じ穴のムジナな訳で、一方的な思い込みで
非道い事を書いてしまったレビューもある。

だいたいペンネームでこのレビュー書いてる
時点で無責任さは似たようなもので、鑑賞中に
何度も身につまされる思いを味わった。

* * *

人が何かの意見を世に発信する時、
そこにはその人の心情や生き様が
どうしても滲み出てくるものなんだろう。

テレビや映画のようにドラマチック
かつシンプルに物事を捉えがちだし、
「自分を良く見せたい」「自分の身を
守りたい」という気持ちもどこかにある。
今までの人生で植え付けられた
価値観や先入観だってあるし、
付け加えるなら、初めから人を貶める
つもりで発言する最悪な輩もいる。

だから結局、「客観的なコメント」なんて
世の中には存在しないんだろうし、見る側も
それを常に踏まえて考えるべきなんだろね。

映画を観た後、ワイドショーのニュースや
街頭インタビューを、以前より醒めた目で
見ている自分に気付いた。

* * *

終盤付近の、
「いいことありますよ、きっと」という言葉。
「俺はお前の味方だぞ」という言葉。

言葉というのは本人が自覚するより
ずっと重いもの。たったの一言で、
相手の人生をどん底に突き落とす事も出来れば、
相手をそこから救い上げる事も出来るのだから。

後者になることはそうそうかなわないけど、
前者になることだけは避けたいと考えた鑑賞後。

<2014.03.29鑑賞>
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余談:
それにしても、生瀬さん演じるワイドショーの
司会者の感じがリアルすぎて(笑)。
進行役を忘れて自分の意見を視聴者に
押し付ける司会者って結構おるよね。
真相が明らかになった後の無責任さも含めて。
まあこれもワイドショーに若干偏見を
持ってる人間の意見な訳だけれど。

浮遊きびなご