劇場公開日 2014年5月24日

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オー!ファーザー : インタビュー

2014年5月19日更新
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“息子”岡田将生ד父”村上淳 「オー!ファーザー」で血縁超えた家族愛を体現

一見普通の高校生・由紀夫がひた隠しにする家族の事情……。それは性格も個性もバラバラな4人の父親に育てられた「煩わしくも愛にあふれた」家庭環境だった。人気作家・伊坂幸太郎の小説を映画化した「オー!ファーザー」(藤井道人監督)は、家族のあり方が多様化する時代に、血縁を超えた家族愛をコミカル&スリリングに描いた人間ドラマだ。主人公の由紀夫を演じるのは2014年、本作を含め3本の主演作が公開される岡田将生。そして、「かぞくのくに」「希望の国」など家族を描いた出演作が続く村上淳が、4人の父親のひとり・葵に扮している。(取材・文・写真/内田涼)

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岡田にとって、伊坂原作の映画に出演するのは「アヒルと鴨のコインロッカー」「重力ピエロ」に続き、3本目。岡田本人の「どうしても出演したい」という強い要望から、キャスティングが実現した。「こんな風に自分から手をあげて、役をやらせてもらうのは初めて。もともと、家族の物語が大好きで、特に『重力ピエロ』では家族のあり方を考えさせられた。今回はまた別の角度で家族を見つめた作品で、物語そのものもすごく魅力的だったので」(岡田)

ある日、由紀夫は町のフィクサーが開店させたゲームセンターで、カバンの盗難現場を偶然目撃。犯人を追いかけるが、途中で見失ってしまう。ところがその後、自宅が荒らされたり、フィクサーの部下に脅迫されたりとトラブルに巻き込まれ、ついに覆面の武装グループに拉致監禁されてしまう。

そんな息子のピンチに立ち上がるのが村上演じる葵をはじめ、佐野史郎、河原雅彦、宮川大輔が演じる“4人の父親”たちだ。トリックと伏線を駆使した、エンタテインメントな救出作戦は伊坂作品の真骨頂である。

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「すごく突拍子もない発想のストーリーでも、原作の骨組みがしっかりしているから、見る側はもちろん、演じる側も安心できますよ。映画の初号試写で、伊坂さんとお話しする機会があったんですが、基本的に『原作と映画は別』という懐の深さがある」(村上)

原作の魅力もさることながら、岡田×4人の父親が生み出す化学反応が、ストーリーの説得力をさらに高めている点も見逃せない。「村上さんをはじめ、お父さん4人とのお芝居がとにかく楽しいし、僕自身も俳優としてうれしかったですね。面白い映画にしようという意識で一致団結していたし、皆さんお芝居が大好きだから、毎日刺激を受けていました」(岡田)、「本当そうだよね。ひと言で父親と言っても、役柄同様に世代もタイプも全然違う4人ですから。現場が楽しくても、映画が楽しい仕上がりになるとは限らない……。でも今回はすべての要素が、絶妙なバランスで」(村上)

さらに村上は、本作への出演を決めた理由を「岡田将生という役者と、濃くがっつり共演してみたかったから」と断言。「実際に共演して、思った通りの男でしたよ。現場での佇まいや、カチンコが鳴った瞬間の集中力……。こんな風に褒めると本人はくすぐったいでしょうけど、岡田将生が今の日本映画界のド真ん中にいることが誇らしい。この映画を見てもらえれば、わかりますよ」と賛辞を惜しまない。当の岡田は頭をかきながら、恐縮しきりだ。

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そんなふたりは、それぞれ違った理由で「オー!ファーザー」をキャリアの節目と捉えているという。岡田は「もう24歳ですし、高校生を演じるのは、これで最後にしようかなと……」と高校生役からの卒業を宣言。この言葉に、村上からは「そんな必要ない。映画の力を信じれば、何でもできるよ。『偉大なる、しゅららぼん』『オー!ファーザー』とあと1本作って、岡田将生の学ラン三部作を完成させてほしい」と異議申し立てがあり、「赤、黒の次は白い学ランがいいよ。白い衣装は、血のりが映えるから」(村上)、「それ、どんな映画ですか!」(岡田)とじゃれ合う様子は、まさに親子そのものだ。

村上は、本作への出演を通して「これからはどんなタイプの映画でも、やっていきたいなと再確認できた。節目になる映画でしたね」と語る。「完成した映画を見て、僕自身がスクリーンのなかでとても楽しそうに見えたんですよ。別にこれまでも、小難しい作品を選んできたわけじゃないんですけど、今後は例えば『オー!ファーザー』みたいに、コメディ色が強い作品にも挑戦したい」。そんな先輩俳優の姿勢に、岡田も「皆さんと対等なお芝居をしていきたいし、それには僕自身が一生懸命やっていくしかないと思っています」と背筋を伸ばした。

父と息子、という本作のテーマにちなみに、最後に河瀬直美監督の最新作「2つ目の窓」で俳優デビューを飾った息子・村上虹郎に対し、父親である村上がこんなメッセージを語ってくれた。ふたりは同作で親子共演も果たしている。「ひょんなことから俳優デビューして、その作品がカンヌ映画祭に出品される。最初の経験値として、僕ら普通の人間じゃあ、体験できないステージにいきなり立っちゃったんで……。これからは率先して、エキストラでも小さな役でもしっかり取り組んで、質のいい苦労を積み重ねてくれればいいかなと思っています。質のいい苦労、これが難しいんですけど」。

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