劇場公開日 2013年5月31日

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「その人であることの証明」オブリビオン とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0その人であることの証明

2020年1月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

萌える

観終わった後、じんわりきました。ストーリ的にも映像美にも。
 半面、初見では、ラストに納得がいかなかった。物語のコンセプトをひっくり返された気持ち!!!(ノ-_-)ノ=。でも一縷の安堵感もあるとこが憎い。
 前半から中盤にかけての物語の作りこみに対して、クライマックスは正直拍子抜けした。
 ジャックやヴィガが丁寧に造形されているのに対して、ビーチや敵キャラがあまり性格付けされていないのが、不満だった。

でも、テーマはアイデンティティ。
 アイデンティティ復活・愛復活だけをシンプルに魅せる為には仕方ないのかもしれない。
 これだけの、SF超大作。基本的な筋はよくある戦いもの。誰が敵なのか。これも、一見、よくあるパターンに偽装されている。が…。
 いろいろと盛り込んでしまうと、本筋が見えなくなる。

自分とは何なのか。自分が認識している自分。周りが認識している自分。
そして、ラストにはさらにその上をいく設定を観客に投げてくる。
その人をその人として、自分が、周りの人が認めるのは、何を根拠にしてなのか。
なんという問いかけだ。

映像だけでも酔わせてくれる。
 スカイタワーの無機質でスタイリッシュな映像に酔ったかと思えば、湖畔のコテージのノスタルジック感。この二つを際立たせるかのような、周りの荒廃した白を基調とした風景。
 荒廃した風景とは言え、スタジアム・エンパイアステートビル・図書館・花と生活を感じさせるものがさりげなく散らばっている。キングコングも出演。
 そしてバブルシップの軽妙さ(乗りたい)、ドローンの最初滑稽(C3?)だけど、後半の不気味さ。
 ジャックとヴィカのプールでのラブシーン。
 図書館でジャックが墜落するシーンまでもが美しい。

でも一番唸ったのはトム様の演技。
 例えばドローンに攻撃されそうになる時のあの緊迫感。トム様の演技如何で間が抜けたシーンになると思うが、機械相手の演技であの状況を表現できるってすごい★★★。
 例えば…ジャックが遭遇した…。微妙な違い。
 例えば…ヴィカとジャックのラブシーンは無機質で綺麗、ヴィカの思いは痛いほど伝わってくるのに、ジャックの方は本当に恋しているとは思えない。なのに、ジュリアにプロポーズするジャックは胸が痛くなるほど初々しい。この微妙な表現力!!!
 トム様の演技なしではただの映像美の映画になったと思う。

アンドレアさん(ヴィカ)も良かった。
 例えば…アンドロイドのような表情かと思えば、生体反応が消えたジャックの身を心配する情感。
 例えば…ジャックが遭遇した…。決定的な違い。

一見、勧善懲悪系の、アクション満載、ドンパチ系の、サバイバル/戦争物の、SF超大作に見せかけて ーそれを期待すると物足りなくなるー、
アイデンティティを問う、哲学系の映画だった。
 とはいえ、堅苦しくはない。
ジャックと、ヴィガと、ジュリアの三角関係を丁寧にみていただきたい、切なくもロマンティックな映画です。

とみいじょん
Kazu Annさんのコメント
2022年10月12日

とみいじょんさん、素敵なレビューですね。
大好きな映画ですが、このレビューを読んで更に理解が深まった気がします。有難うございます。

Kazu Ann