劇場公開日 2013年8月31日

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「アニメをきちんと見てから見ることをお薦めします」劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 水樹さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0アニメをきちんと見てから見ることをお薦めします

2013年9月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

幸せ

※※※※※一番重要なことを最初に伝えます。※※※※※※※※※※※
この映画は「あの花」の総集編という面がかなり強いので、
アニメを見ていない、きちんと理解していない方は、
正直見に行っても絶対面白くないし理解できない面がかなり多いです。
なのでまず、アニメをきちんと完結させて1週間位してから、
映画を見に行くことをお薦めします。

また「あの花」を見て、もっとしっかり話の本質を知りたい!
っという方でないと見ていてもあまり面白くないと思います。
流し見であればDVDで十分!というレベルなので、
そういう方にも絶対にお薦めしません。

「あの花」という作品が本当に好きで、
音楽や表情の描き方が好きで、各キャラクターの心情を
もっと深く掘り下げて考えたい!
っという方にはお薦めします。
むしろ映画館の音響で是非「あの花」の世界を
堪能してほしいと思います。
結論からいうと本当にファンのための映画です。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

とりあえず第一に言えることは。
あの音楽はやっぱり映画館のあの音響で聞くべきです!
本当に素晴らしかった!音楽だけで涙腺崩壊します(笑)

今回の映画の内容は総集編+追加パートという構成になっています。
総集編に関しては本編のキャラクター心理の
解答編のような構成になっているので。
正直、キャラクターの心情の機微を全く理解できない、
そこからくる行動や表情の書き込みを理解できない、
そういうレベルの人には全く面白くないでしょうし。
同時にアニメ本編でしっかりとキャラクターの心情を理解して
それぞれの抱えている苦しみを理解している人には、
「何今さら説明しているの?」状態にはなると思います。

まぁ言ってしまえば、読解力のない人のために
補助的に作られた構成とキャラクターの心情に対して
真剣に考えている人に対する、「これが公式の答えだよ」
という解答を織り交ぜたような編集になっています。
個人的にはこれは物凄くよくできていたと思います。

今回の映画ではポッポ、ユキアツ、ツルコに焦点が当てられれ、
彼らの心の内面をより分かり易く表現されています。
これは今の視聴者にあまりに読解力がなく、
物事をしっかりと考察できないかを象徴しているようにも
感じはしましたが、実際アニメ本編では曖昧にされている
部分でもあったので個人的にはありだと感じました。
特に「パトラッシュ」のくだりと願いの繋がりは…、
多分読み取れない人多すぎて製作者がわざと
あの流れにした感じは凄く感じましたorz
「メンマへの手紙」を知っている方には、
それが完成するまでの心情や描写も
描かれているので、色々と感じるものはあるかと。

本編で何故ユキアツがあんな恰好をしたのか、
その後、何故あんなに陰で走りまわったのか、
ポッポの本編での表情の一つ一つ。
ツルコのあのメンバーに対して抱いている感情。
ネットの反応を見ている限り、
本質的に理解できている視聴者は
かなり少ないのではないのかな?っと思います。
アニメでは主人公の視点で彼らの言動を
理解していかなくてはいけないので、
なかなか答えを出しづらい。
もちろんこれは製作サイドの意図としたことでしょうが…。
反面、今回の映画はそれぞれのあの時の心情を、
メンマに手紙として送っている形式なので、
その辺りは素直に理解できるように構成されています。

メンマ視点に関しても同様で、
これはよくギャルゲーなんかにありがちな手法ですが…。
主人公の視点や思考=視聴者の視点や思考となりがちで、
その裏であまり何も考えていなさそうなヒロインが、
こんなにも色んな事を考えていたんだ、感じていたんだ。
っとやられると実際、結構心にグッとくるものがあり、
それを大分利用した手法だと思います。
メンマという存在は年齢にしては幼く、
俗に言われる「純粋」というキャラを
描こうとしてた面があるので、その辺りも含めて、
ちょっとこれはギャルゲーっぽくて手法としては
「気持ち悪い」とは感じてはしまいますが(^^;

けれど、やはり、ある程度リアルなティーンエイジャーの
心情を描いている中で、1人だけ妙にデフォルトをされた
「メンマ」という異質な存在からの視点というのは、
重要な要素ではあるとも考えます。

実際、幼いままのメンマが成長した彼らに対して、
どんな心情を抱えて彼らを見ていたのか。
メンマに対して一方的な感情をぶつける彼らに対する
メンマ視点の解答はアニメでは簡単には読み取れない。
特にツルコに対するメンマの解答は、
視聴者にしか伝わらないとはいえ、かなりグッときました。

追加パートに関してもメンマが「みんな」になれない理由。
メンマ自身が考えている「みんな」という概念。
その辺りの相変わらずの「あの花」節も好きです(笑)

色々書きましたが、結局のところ。
この映画は単純な一本の映画ではなく、
ファンに対する感謝を込めた映画のように感じます。
良くも悪くもこの作品はここで完結でしょう。
彼らの「あの夏」に対する、それぞれの思いでしかない。
そういう作品なのだと思います。

彼らのその後も、恋心も、何度も巡る夏の中で、
少しずつ少しずつ変化していくのだと思います。
たった1年で全ての感情に答えを出して、
全てのものに終止符を打つなんて、
それはやっぱり彼らと言う人格に対する
冒涜でしょうし、そんな算数のドリルのように
解答を求めて行ってもしょうがないでしょう。
そんなものが見たければ自分の心情や設定を
やたらベラベラ喋って、馬鹿でもわかる
キャラクター講座をして、目に見える突っ込まれそうな
大きなところだけ適当に畳んでいる、
最近のアニメでも見ていればいいかと…。

彼らのその後を見たいという感情ももちろんありますが、
この物語の彼らは自分達で想像すべきだと思いますし、
下手な答えなんて正直いらないと思います。
別の人と結ばれるかもしれない、遠くへ行くかもしれない、
不幸な結末を迎えるかもしれない。
どんなことが起こるかわからない、そこに歩みだしていく、
それを「想像」できるか、できないかは人次第。
けれど、「この夏」の経験を胸に、彼らは
色々な挫折や苦悩がある度に成長していくのでしょう。
遠く離れてもず~っと心は一緒にあろうとするでしょう。
多分そういうことを感じれればそれで十分かと。
視聴者が神の視点で全てをしる必要などないと思いますし、
それがこの映画と作品のあるべき姿だと思います。

メンマの今後も、彼らの今後も、そこに対する心情も
彼らの物語は永遠に、彼らのものであってほしいと。
「あの花」ファンとしては純粋にそう思わされる作品でした。

あっ、あとユキアツの女装ネタに関しては。
まぁスタッフの遊び心というかSな愛を感じました(苦笑)
女装ネタに関してはインパクトがあるので、
確かに目が行ってしまいがちではありますが、
結構、作品内にも似たようなスタッフの悪戯っぽい
演出が見てとれるので。ただ単にそのネタを引きずってる
っというわけではなく。純粋にスタッフたちが
この作品を楽しんで、慈しんで作っているんだな。
そういう印象を受ける場面は多かったです。
妙に悪乗りをする辺りが文化祭みたいなノリで
個人的には凄く好きなんですが(^^;

水樹