劇場公開日 2024年3月1日

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「厚い辞書にはアツい情熱を!」舟を編む クラゲ男爵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5厚い辞書にはアツい情熱を!

2013年12月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

幸せ

この物語は、ある出版社のお荷物部署だった辞書編集部が、新しい辞書『大渡海』という辞書を作るというお話。

コミュニケーションを取るのが苦手で、下宿屋のおばさんにしか心を開けなかったマジメ君(松田龍平)が、辞書作りを通して自分の仕事に生き甲斐を見つけたり、かぐやさん(宮崎あおい)と恋に落ちたりするエピソードを辞書が完成するまでの13年間と共にゆっくり描かれる。

この映画が好感が持てるのは『日の当たらない仕事をしている人にも等しくやり甲斐や光が当てられている』からなのかもしれないな。

他人から『お荷物部署』と白い目で見られようと、地味な繰り返して気の遠くなるような作業だとしても、そこには必ず面白味もやり甲斐も存在し、情熱を傾けるだけの価値はあるのだ。
そんなメッセージがほんわか伝わってくるようで、見終わった後の印象は不思議なほど温かかったな。

『当たり前なんだけど、なかなか語られない』部分に焦点をあてたこの映画は、先の見えない仕事を抱えている人や仕事に意義を見いだせない人にとって、優しい応援歌なのかもしれないな。
すくなくてもオイラにはそう思えたんだ。

純粋すぎてなかなか人と分かり会えない主人公(名前もマジメ君w)や下宿屋の娘のかぐやさんなど、人物の深みにやや物足りなさも感じないわけでもないけど、それでもあえてセリフで語るのではなく雰囲気で関係性や心情を語るという手法は「これは映画なんだ」って思えるような演出で満足。

チャラいんだけどマジメ君の熱意に感化されて、部署を離れてもサポートし続けるオダギリジョーや、一般部署から配属されて変人だらけの仕事場にとまどいながらもちょっとづつやり甲斐を見つけだす新人女性社員といったキャストもすげー適役だった。
特に新人社員は「むしろこの子の目線の方が観客に一番近い目線を持っている」感じがして好感を持てたことも、話の作りとして感心した部分だったりした。

もうちょっと辞書づくりならではのニッチな知識を見たかったような気もしたけれど、語られるのは『辞書がどう作られるか』ではなくて『そこに携わる人々の想いや熱意』だと考えれば納得もつく。

「今の仕事がつまらない」と思う人や、抱え込みすぎた宿題を前に途方に暮れている人にこそ見て欲しい映画だと思うんだ。

『厚い辞書を作るには熱い情熱が必須』

熱意こそが世界を動かす、

のかもしれないな(笑)。

クラゲ男爵