劇場公開日 2013年12月13日

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「圧倒的な無重力、圧倒的な孤独感」ゼロ・グラビティ CRAFT BOXさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0圧倒的な無重力、圧倒的な孤独感

2014年11月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

すでに散々語られつくしているが、宇宙における圧倒的な無重力を映画手法でいま出来る最大の表現を実現させてことはすごい事。
3D映画は数あれど、ここまで映像表現は進化したのかという事を実感させられる。もちろん、IMAX & DOLBY ATMOSなど新技術の開発が実現させているのだが、本作の表現力は、立体的な映像表現である3Dを、面と面の重ね合わせから、より立体的表現へと進化させている点が特筆される。だからこそ、ジェームズ・キャメロンが『アバター』で3D表現の新たな可能性を示して以来、最大の進化が本作に存在しており、映画史の中で貴重な作品となった事は間違いないだろう。

登場人物が、ほぼ2人。途中からは主人公であるサンドラ・ブロックだけになるという構成・演出も、この映画には欠かせない。最初の13分間という長回しをはじめ、映像技術や音響技術を観客は体感させられた後、無音の中に放り込まれる。そこで、彼女の孤独感までも観客に体感させられる。
しかも、長回しと言うのは、基本的にカメラマンの視点を観客に意識させるものであるから、そこから解放される事で、観客は主人公の視点と同調した気分にもなる。この辺の構成や演出は見事。

もちろん、監督のアルフォンソ・キュアロンは、『パリ、ジュテーム』でも自分が担当した5分ほどの映像を完全1カットで撮り上げたり、『トゥモロー・ワールド』でも効果的な長回しを撮る人だからこそ、オープニングから宇宙空間の中で「息もつかせぬ」長回しを実現できたわけで、要するに、この監督だったからこそ撮れた映画であるという事は間違いない。

40歳を過ぎると、これほど圧倒的な情報量の映像や、3D、360度音響など、とても肉体的に非常に厳しく、正直言って気分が悪くなりそうな所を、ギリギリ堪えるという苦痛さもあった。しかし、かつて子供の頃、『2001年宇宙の旅』『スターウォーズ』が圧倒的な宇宙体験をさせてくれたように、あるいは『アバター』が3D映画の可能性を示してくれた時のように、本作もいま生きている人間だからこそできる「現代映画の最先端」の体感を、逃してしまうのはもったいない。
普通の映画館なら安い時で1000円ほど、IMAXでも2000円程度で、この体験を出来るのだから、改めて映画というのは本当に大衆文化だと思う。

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CRAFT BOX