劇場公開日 2012年11月17日

  • 予告編を見る

「性と苦悩と苦悩する生き方」ふがいない僕は空を見た 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0性と苦悩と苦悩する生き方

2013年6月14日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

コスプレSEXに耽る主婦と高校生、貧困に喘ぐ同級生…。
タナダユキ監督が、「俺たちに明日はないッス」「百万円と苦虫女」とは違う重厚な演出で、性と苦悩と模索する生き方を描いた群像劇。

登場人物がそれぞれ抱える問題は深い。
アニメとコスプレが好きな主婦・里美は、決して幸せとは言えない結婚生活と執拗に子作りをせがむ姑と不妊治療の重圧から逃避するように、アニメのイベントで知り合った高校生との情事にますますのめり込んでいく。
高校生の卓巳は、里美との関係に後ろめたさを感じ、一度は別れを決意するが、やはり忘れられずヨリを戻す。しかし、ネットで関係をバラされ、不登校になり、自分の殻に閉じこもる。
卓巳の友人・福田は、痴呆症の祖母と団地で暮らし、絶望的な貧しい生活の鬱憤を晴らすかのように、卓巳への嫌がらせを続ける。

息の詰まる閉塞感、周囲の偏見、思い通りにならない人生の不条理…。
体の関係でしか安らぎを得られず、心の闇を行動にする事でしか自分自身を見出せず、悲しみと孤独の中に呑み込まれていく。
やるせなく、痛々しいながらも、現状から抜け出そうと必死にもがく姿は、紛れもなく“生”への衝動だ。

コスプレ姿や全裸のラブシーンを演じきった田畑智子は賞賛モノ。毎日映画コンクール主演女優賞、キネマ旬報主演女優賞第2位は納得。無視した日本アカデミー賞は重罪。
葛藤を抱える高校生に扮した永山絢斗と窪田政孝の若手二人の佇まいも素晴らしい。
助演陣もナイスサポート。原田美枝子は助産師である卓巳の母を演じ、卓巳は母の仕事を手伝い、出産を通じて“生”への意味を大きく持つ。福田のバイト先の“ワケあり”先輩・三浦貴大も出番は少ないながら印象的。

感動とか清々しさとか爽やかさを感じる映画ではないが、痛切な余韻が深く残る秀作。

近大
えびかに伯爵さんのコメント
2014年2月25日

田畑さんの脱ぎっぷりに・・ただただ驚愕です(+_+)(+_+)(+_+)シ

原作未読ですので・・乖離が気になりますが・・
邦画としては興味深かったですね(*^^)v

えびかに伯爵