劇場公開日 2012年10月27日

「史実への好奇心が満たされない」危険なメソッド マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5史実への好奇心が満たされない

2012年12月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

冒頭のユングとザビーナの出会い。“談話療法”を始めるシーンが少し舞台っぽいと感じる。あとで分かったのだが、本作の元は舞台版だったということだ。

心に傷を持つ役が多いマイケル・ファスベンダーが、本作でも自分の患者であるザビーナへの思いが断ち切れず葛藤するユングを好演する。
また、幼い頃の体験が原因となる性的トラウマに悩むザビーナを、キーラ・ナイトレイが体当たりで演じる。
ユングの心がほかの女性に向かっていることを知りながらも、夫に愛情を注ぐ貞淑な妻エマのサラ・ガドンの品のある美しさもいい。
フロイトのヴィゴ・モーテンセンは一歩引いた演技で、ユングとザビーナに焦点を当てる。

ただ、ユングとフロイトの結びつきと決別、この二人へのザビーナによる影響を語る構成が曖昧で、史実がきっちり伝わってこない。とくにザビーナが精神分析学の道に進み卒業論文を書き始めるあたりからは描写が駆け足になり、やや腰砕けぎみになる。
中盤で、フロイトが自己の固定観念にとらわれた考え方なのに対し、ユングは自由な幅広い分析をして両者の間に溝が入り始める描写はある。だが、その決別に至る決定的な原因は何だったのか、そしてザビーナがどう絡んだのか、彼女が二人の偉大な学者に与えた学術的な影響も見えてこない。史実への好奇心が満たされない。
終盤は、ヴィゴ・モーテンセンをもっと前に引き出してもよかったのではないか。

マスター@だんだん