劇場公開日 2012年10月27日

「受け止め方はアナタ次第」終の信託 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5受け止め方はアナタ次第

2012年10月26日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

こういう映画を見ると、TVドラマや漫画の映画化って何なんだろう?と思ってしまう。
勿論悪い訳は無い。ただ、つい思ってしまっただけだ。

周防正行監督最新作。
その重厚な演出は巨匠の域。
草刈民代、役所広司、大沢たかお、俳優陣の熱演も素晴らしい。
周防監督の言う所の「映画らしい映画」として、文句の無い出来。

だが、この映画が掲げるテーマは、人それぞれの受け止め方がある。

重度の喘息を患い苦しむ江木と、彼に託され最期の処置を行う女医・綾乃。
医師と患者の関係を超え、強い絆で結ばれる。大人のラブストーリーと銘打っているが、男女愛というより、「ミリオンダラー・ベイビー」に近い人間愛に感じた。
一見美談のようにも思えるが、その行為は法に触れ、検事・塚原は厳しく追及する。

綾乃に殺意など毛頭ない。江木に託され、彼を思い、苦しみから解放させてあげたかっただけだ。
しかし、医師でありながら自ら患者の命を絶った行為に対して、重い十字架を背負わなければならない。

チューブに繋がれ、肉の塊となっても命を繋ぎ止め苦しみ続けるのは、人生の最期としてはあんまりだ。江木のように尊厳死を望む人が多く居るのもまた事実。
信じ託せる相手が居るのはこの上ない最期だが、江木はその最期を家族に託せなかった。家族を思っての事だが、ここも意見が分かれる所。

厳しく追及する塚原検事は威圧的で悪役的な描かれ方だが、終末医療の法制度がある以上、その主張は公正だ。江木には延命の望みが全く無かった訳ではなく、法の番人として何ら間違っていない。

それぞれの言い分に納得させるものがあり、どっちが是か否かの問題ではない。

明確な答えなどない映画。
受け止め方はアナタ次第。

近大