劇場公開日 2012年10月26日

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「「アカデミー賞作品賞最有力候補」?」アルゴ Arbelosさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5「アカデミー賞作品賞最有力候補」?

2012年11月2日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

興奮

知的

完成度は高いのです。細かく丁寧に作られていますし、近年の紛争問題について考える良いきっかけにもなるでしょう。
しかし、これが次のオスカー候補だと言われると疑問符が付きます。人間的なドラマが欠けており、ストーリーが希薄だからです。
「劇中の人物と人物との間にある関係性やドラマを描写しよう」という意図があるらしき場面は多少ありますが、おまけ程度であり、あまり掘り下げられることはありません。特に主人公と家族との関係性の描かれ方は何の脈絡もなく突発的です。「理由」が良く分からないのです。
確かにこの作品は、人間関係のような小さな舞台ではなく、政治的な広い舞台にテーマを持ってきているのでしょう。しかしそのような意図がはっきり汲み取れるのは冒頭と終わりぐらいで、あとは脱出劇を引き延ばして流しているようなものです。劇中の大半においては、何かしら深刻に考えさせられるようなことはありませんでした。もし中東問題を考えたければ、「ハート・ロッカー」の方が優れていると思います。
最近関心の高い中東を絡めて、ある程度真面目に作りアメリカ国民の興味を引けばアカデミー賞の候補になれる、というような安易な仕組みなのでしょうか?日本人である自分には分からない部分も多いはずですが、それでもこの作品を手放しで絶賛することには反対です。
見応えがあるのは確かですから、とりあえず一度鑑賞して各々が考えてみることをお勧めします。

Arbelos