劇場公開日 2012年5月12日

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キラー・エリート : 映画評論・批評

2012年5月9日更新

2012年5月12日より新宿バルト9ほかにてロードショー

“殺しのエリート”をめぐる実録活劇の中に際立つアウトローの“殺しの作法”

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最初に題名を聞いたときは、リメイク流行りの昨今、ついにサム・ペキンパーの1970年代の同名怪作までもと思ったが、そうではなかった。英国特殊部隊SASの元隊員が発表した“実録”冒険小説の映画化である。どこまで本当の話かはさておき、この三大スター共演作は犯罪活劇として掛け値なしに面白い。

ここで言う“殺しのエリート”とは、公にできない裏工作にも手を染めるSASとその息がかかったフェザー・メンなる極秘保安組織のことだが、当然ながらより魅力的に描かれるのはジェイソン・ステイサム扮するフリーランスの殺し屋ダニーのほうだ。囚われの身の師匠ロバート・デ・ニーロを救うために危険な暗殺を請け負い、黙々とプランを遂行しつつ、己が守るべきルールや仁義を貫き通す。血生臭く荒っぽい描写を満載しながらも、単なる勢いまかせの粗雑な映画になっていないのは、ダニーの“殺しの作法”が芯に据えられているからだ。

ひげ面に幾つもの傷痕を持つ元SAS隊員役のクライブ・オーウェンも負けじとプロの殺気を漂わせ、脇に回ったデ・ニーロもいぶし銀の存在感を発揮。ダニーと恋人のエピソードが少々浮いたフェアリーテール風に描かれている点は賛否が分かれるだろうが、これまたステイサム好みの“裏社会を生きる男の作法”と言えよう。いつしか敵役のオーウェンも組織の枠からはみ出し、三大スターが初めて揃い踏みする終盤の落とし前のつけ方にもニヤリ。そう、これは殺しのエリート組織の話ではなく、アウトローな猛者たちの心意気を味わうべき一作なのだった。

高橋諭治

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