劇場公開日 2012年5月18日

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「ハワイ通が知らないハワイ」ファミリー・ツリー 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ハワイ通が知らないハワイ

2020年7月11日
PCから投稿

いい映画だったなとしみじみ思い出します。
リアリティにも寄せながら、楽しい人物像もありました。クルーニーの一般人の感じが、いい絵になっていました。ウッドリーが演じたアレクサンドラは、過剰さのないリアルな反抗期の娘でした。シド役のNick Krauseのキャラクターは、軽いけれど裏がなく、愚かだけれど心が広い、いい兄ちゃんでした。

映画は、多少おおげさに言ってしまうと、ひとの不完全さを受け容れること──の構造をもっていたと思います。

アクティブな嫁が、事故によって昏睡となり、そのあいだに、いままで知り得なかった素行や夫婦関係が、露わになってくるのです。

ロバートフォスターが演じた嫁の父は、娘が植物状態になったことを逆恨みして、マット(クルーニー)につらくあたります。それは理不尽とはいえ、相対的な普遍性のなかにいる父親だったと思います。

マットが人妻であるジュリー(Judy Greer)にとつぜんキスするシーンがあります。
ジュリーに夫ブライアンの浮気を、示唆する目的だったのかもしれません。
でも、とっさに思いついたようなキスでした。
説明のできないキスでしたが、観る者にはキスの理由、かれの内側の葛藤がわかりました。セリフのない行為から、むしろ脚本が浮かび上がるシーンだったと思います。

そして、どんな妻だったとしても、やはり愛していたんだというところへ持っていくこと、に加えて、カウアイ島によこたわる先祖の土地──厖大な自然の地を、未開のまま維持するという決意が、しっかりと重なってくるのです。みごとというほかない演出とストーリーでした。

一連のすったもんだを乗り越えると、しぜんに家族の絆ができあがっています。カウチでくつろぐラストには無上のほっこりがありました。

なんども行っているセレブたちさえ知りえないほんもののハワイがある──そんな感じがする純粋な映画だと思います。

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津次郎