劇場公開日 2012年5月18日

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「Alexander Payne」ファミリー・ツリー vary1484さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0Alexander Payne

2019年1月26日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

笑える

幸せ

こういう映画が大好き。
アレクサンダー・ペインというなんとも素朴かつ豊かな世界を描く監督・脚本家の素晴らしい作品。もちろん、ハラハラ、ドキドキするようなサスペンス・スリラーも良いし、考えさせられるようなサイコロジカルも良いが、やはり、ヒューマンドラマには目がない。しかも、彼が描く作品には、大それた事件性もないし、急に主人公が成長するようなシンデレラストーリーもなく、様々なキャラクター、特に家族が小さなことをきっかけに少しずつ繋がっていって、人間としての情だったり、絆だったりを育んで行くという、その素朴さが大好き。私たちが日常経験するようなことが、たくさん出てくる。日本のドラマに少し近いといったら良いのかな?

彼の作品の良さは確実にキャラクターにある。何気ない、その辺にいるようなキャラクター。しかし、映画で描かれる前の過去と、映画で描かれる後の未来を持っているキャラクター。それが映画開始30分以内に色濃く描かれるから、その後の展開に超現実的な事件が起きなくても、キャラクターに感情移入することができる。
今作でいうと、家族3人のキャラクターがとても豊かだし、お互いが影響しあってキャラクターが出来上がっているんだなということが分かる。さらには、昏睡状態の奥さんの過去も分かっていく。たとえ、全く動かず、喋らずとも。それは例えば長女のエリザベスに対して、「お前の性格は良い意味でも、悪い意味でも、母親にそっくりだ」と主人公のマットが言うシーン。そこからさらに、次女の暴言に対して「そんな言葉遣いどこで習ったんだ?」/「お姉ちゃん!」というところも。更に言えば、最初何%の人が、エリザベスの彼氏シドのことを「なんやコイツ(怒)」と思ったことか。それが最後のあの空気の読み方!こうやって家族ってできていくんだなと思いました。

とても些細なことですが、アレクサンダーペインは撮影へのこだわりがすごいんじゃないかと思う。フレーミングやサイズ、レンズにして見てもキャラクターの変化を後押しするぐらいの些細な違いで変化させているのがすごい。一つ例にとってみると、みんなでカウアイ島へいく後半のシーン、フレームにいるのは4人全員。海岸をただ歩くだけのシーンであっても、4人が並んで時には2人ずついいバランスで歩いている。それは、誰がどう見ても家族。別にそのショットでストーリーが前進するわけではないが、確実にキャラクターは前に進み、お互い歩み寄っている。このような、視聴者が無自覚の内に受け取る印象というものを、スクリーンへと映し出す才能は素晴らしい。

この映画から感じたことは、人の繋がり。作中たくさんのキャラクターが出てきますが、そこには夫婦の繋がり、親子の繋がり、友人の繋がり、ビジネスの繋がり、土地の繋がり、などいろんな人々の繋がりが出てきますが。一番理由いらないのは、家族の繋がり。家族がつながっているか繋がっているかに理由はいらない。通い合った遺伝子と、それまで過ごしてきた時間があるから。その全てを表すような、クライマックスの病室でのシーンはとてつもないパワーでした。ジョージクルーニーの涙には泣かされてしまいました。そして、これからくること間違いないであろうシェイリーン・ウッドリーには未来を感じました。

vary1484