劇場公開日 2012年11月17日

「鑑賞前のあなたへ。」ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 蒔島 継語さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0鑑賞前のあなたへ。

2012年11月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

難しい

これから「エヴァンゲリヲン新劇場版:Q」をはじめて鑑賞する、あなたへ。

このテキストにネタバレはありません。
鑑賞前の注意のみ述べます。

鑑賞前に、覚悟を決めて下さい。
何が起きても決して動じない覚悟を。

全く新しいエヴァンゲリオンが巻頭からぶちまけられます。

だから、覚悟して欲しい。
衝撃に備えて欲しい。

しかし思い出して欲しい、エヴァンゲリオンとは、何度も繰り返すこと。やり直そうと、もがき苦しみながら前進を試みる物語であったことを。

理不尽な拒絶、残酷な現実に抗い、立ち向かい、どんなに無様でもみじめでも立ち向かい、生きて行こうとすること。それこそがテーマであり、散りばめられた思わせぶりな謎も伏線も、単なるガジェットに過ぎなかったことを。

四部作の中にあって、「Q」の役割は「断絶•変調•再編」。

だからこそ「redo」なのです。

鑑賞のポイントは、碇シンジ君。彼もまたその「状況」に突然放り出され、ポカーンとする間もなく物語に追い立てられて行くからです。

演出サイドは、意図的に、観客がシンジ君の視点で鑑賞することで、突然の「異世界」を徐々に受け入れられるように「全てをシナリオ通りに仕組んで」います。

突然のことに呆気にとられるかも知れないけれど、どうか碇シンジ君の背中を追いかけて行って欲しい。

Qにおいて、物語はあえて観客を放り出します。理不尽でもなんでも、説明があろうとなかろうと、理解できようとできまいと、そういう状況に居合わせてしまった、関わってしまった、その中でもがきながら、わからないなりに、前だと思う方向へ進んで行くしかない。

ここに制作者の意図があります。

なぜ、あえてこんな構造を採用したのか。
東日本大震災に対する、物語の語り手としての、ひとつの回答、なのかもしれません。少なくとも俺はオトナの立場でそう受け取りました。

強制的に、そんな状況に放り込まれてしまうから、賛否両論真っ二つに割れているんです。

恐らく、そんな反応も織り込み済み、でしょう。

新たな謎や伏線の数々、聞き慣れないコトバは、とりあえず、「そういうモンなんだ」と受け流して。二回目、三回目の鑑賞でじっくり消化しましょう。

あなたの期待するものがそこにあるかどうかはわからないけれど、全く新しいエヴァンゲリヲンが始まる、その地平に立つ事はできる。その事だけは、保証します。ここまでの話が理解できていれば、この映画は一回でちゃんと「わかる」ようにできてます。

思い出して下さい。はじめてエヴァンゲリオンを体験した時のことを。そして、新劇場版は単なる焼き直しではないという事を。

繰り返します。
覚悟を決めて下さい。
衝撃に備えて。

最後にひとこと。
本作のキャッチに採用されたコトバ。

「希望は残されているよ。どんな時にもね」

観て、感じて。そして考えて下さい。

蒔島 継語