劇場公開日 2011年10月15日

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一命 : インタビュー

2011年10月14日更新
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瑛太「ニッポンの俳優」として抱く時代劇への思い

「一命」は、1962年に「切腹」として映画化されたことでも知られる、滝口康彦の小説「異聞浪人記」が原作。三池崇史監督が3Dで新たに創造した作品世界で重要となる、切腹によって非業の最期を遂げる千々岩求女を演じたのが瑛太だ。どちらかといえば現代ドラマに軸足を置いている印象があったが、そのイメージが一変。家族を守るために命を懸けなければならない侍の性を、見事に奥行きのあるスクリーンに焼き付けている。本人の思慮深い語り口からも時代劇への強い思いが伝わり、その奥には「ニッポンの俳優」としての自負が垣間見えた。(取材・文/鈴木元、写真/堀弥生)

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今年5月のカンヌ映画祭。3D作品として初めてコンペ部門に選出された「一命」の上映に合わせ現地入りした瑛太は、全世界に向けたお披露目の舞台を見届けた。

「カンヌに行くことや、そこでの結果や評価を目標にしていたわけではないけれど、あのレッドカーペットを歩くことは、俳優という仕事に携わっていても誰もができることではないので、誇りに思おうと。それにお祭りだから、映画は純粋にひとつのスクリーンを皆で共有し、何かを感じて声を出したり拍手をしたり、人とつながるためのエンタテインメントだったんだということをすごく感じました。切腹のシーンでも『Oh!』という声が上がったし、見終わった後のパーティでも『君、おなかは大丈夫か?』みたいなジョークを5人くらいに言われて(笑)。それはすごくうれしかったです」

小林正樹監督、仲代達矢主演の「切腹」も、カンヌで審査員特別賞を受賞。日本映画史に残る名作だけに、瑛太も「一命」のオファーがくる前に見て内容は把握していた。同じ原作を基に作られたということに対しては「意識はありました」と振り返るが、それ以上に三池監督や、市川海老蔵、役所広司、満島ひかりら共演者に興味をひかれたという。

「『一命』がどういう映画になるのか、台本を読んですごく引き込まれました。『切腹』を見たときに、切腹した侍がすごく気になっていたんです。子どもたちに何かを教えていて、好青年でまっすぐな人だけれどかわいそうな最期を遂げるという印象があって、その役を自分がやるんだと思ったときにプレッシャーはありましたけれど、家族を守るために行動を起こす求女に共感できたので、芝居をち密に計算するというより、自分自身で感じたままにやってみようということのほうが大きかったです」

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求女は、病気の妻と病気になってしまった息子の診察代を捻出するため大名屋敷を訪れ、切腹を申し出る。だが、家老には仕官や金子を得ようとする狂言切腹と断罪され竹光での切腹を余儀なくされる。物語は求女の父・津雲半四郎(海老蔵)の回想で語られる、時代のうねりが生んだ痛ましい悲劇だ。求女への共感は、自らが結婚し子どもができたことで得られた部分も多いという。そして、撮影現場は海老蔵、妻・美穂役の満島と新婚がそろうという偶然も重なった。

「台本を読んだときも、家族を守るためならそこまでするなという感覚はありました。結婚や子どもが生まれるのは素敵なことで、人生の中でそうそう起こることではないし、分岐点にもなってくるから、そのタイミングで海老蔵さん、満島さんと共演できたことは俳優人生においてポイントになってくると思います」

一方、三池監督にとっては初の3Dで、フィルモグラフィの中でも異彩を放つ静の時代劇といえる。製作が発表された際、「まさか内臓が3D!?」といった憶測がまことしやかに飛び交った。

「それは皆に言われましたね(笑)。血や内臓が飛び出してくるんだろうって。全然違います、奥行きなんですよって言っても、どういうことなの? みたいな。うまく説明できないですよね」

初めてとなる三池組には過激なイメージを抱いていたが、実際はいい意味で裏切られたようだ。3Dは演じる側に影響はなく、求女というキャラクターについての細かい要求もなかった。

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インタビュー2 ~瑛太「ニッポンの俳優」として抱く時代劇への思い(2/2)
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