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◆アレクサンドリア

人間の営みよりも大きな尺度で捉えられた"時間"の姿
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  紀元4世紀エジプト、政治闘争のため弾圧された実在の女性哲学者の物語だが、映画から浮かび上がってくるのは、人間の営みよりも大きな尺度で捉えられた"時間"の姿だ。

  この印象は、映画の冒頭に、物語の舞台となる古代都市アレキサンドリアが、通信衛星から撮影された地球表面の俯瞰映像として、アフリカ大陸北端のナイル川三角地帯という"地形"の形で登場し、それが映画の中で、何度も繰り返し登場することから生じる。物語の中で、登場人物たちを取り巻く環境は大きく変化していくが、その物語の途中でアレキサンドリアの俯瞰映像が画面に登場すると、その地形に変化はない。その瞬間、より大きな"時間"が姿を現す。

  現在も在るのはその"時間"だけで、映画に登場するものはすべて、今は存在しない。映画は、紀元4世紀の古代都市アレキサンドリアを魅力的に描いていく。古代ギリシャの英雄アレクサンダー大王によって建築された学問の都、人々が自由に演説をする広場、世界の叡智を集めた図書館、街路の巨大な立像。この魅惑的な都市は、映画の中でも暴徒たちに破壊されるが、さらに後の地震や洪水のため水没し、今はない。キリスト教も今は排他的な新興宗教ではない。監督は夜空の星座も、現在のままではなく紀元4世紀の形に加工したので、映画の夜空も今はない。映画は、今は存在しないものを、徹底的にリアルに描く。そしてそれらの不在によって、今もなお在るものの姿を浮かび上がらせる。

(平沢薫)


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