劇場公開日 2011年4月29日

「人は人に傷つけられるけど、救うのもまた人である」阪急電車 片道15分の奇跡 ささんの映画レビュー(感想・評価)

4.5人は人に傷つけられるけど、救うのもまた人である

2022年6月10日
PCから投稿

人は皆悩みを抱えているのだと思う。他人からみれば大した悩みじゃなかったり、解決する術がたくさんあるように思う。でも当人からすれば死なないけど、死にたくなるくらいの悩みだったりする。人が人を救い、救われた人がまた誰かを救うといった構図は、まさに映画を見終わった人間にとっても「この世界は案外悪くない」と思わせるものになっていて痛快だった。

映画を見終わって思ったのは、人は人に傷つけられ、人に救われるということだ。私事であるが、ちょうど大学に入学するとき、コロナによって大学が全面オンラインになった。それまで小、中高と過ごしてきたが、人によって傷つけられる人生であり、オンライン授業という人に傷つけられることのない生活にひどく安堵した記憶がある。とはいえその生活が続くとどうしようもない孤独感にさいなまれた。思えば最悪だったと長らく感じていた学生生活は、楽しいこともあってうれしいこともあって人に救われたことだって確かにあった。大学の講義で教授がふと、たくさんの人と触れ合うことは疲れるが、だからといって一人はそれはそれで哀しい、ほどほどがちょうど良いと言っていたのだが、きっとその通りなのだと思う。人は人と触れ合わなければ、傷つくことは少なくなるが、幸せを感じることも少なくなるだろう。人は一人では結局は生きていけないし、人とかかわることは多くのマイナスを生むことであるが、プラスもまた生まれるものなのである。

さ