劇場公開日 2012年11月2日

「野村萬斎ありきの作品 けれど佐藤浩市もいい」のぼうの城 マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5野村萬斎ありきの作品 けれど佐藤浩市もいい

2012年11月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

もとは昨年の9月17日に公開されるはずが、大掛かりな水攻めのシーンがあることから公開が延期になった作品だ。

その水攻めのシーンだが、VFXのデキはあまり高くない。画質も粗い。
VFX好きとしては残念だが、特殊効果が映画の全てではないので、この作品の面白さを大きく損なったとは思わない。
この作品の面白さは、領主・氏長が小田原へ出兵したため僅かに残された兵とともに城を預かることになった長親の挙動にある。
剣も槍もさっぱりの“でくのぼう”だが、農民たちからは“のぼう様”と慕われている。この長親と農民との触れ合いがよく描かれており、これが中盤以降の展開への伏線となる。

この映画はなんといっても野村萬斎ありきの作品だ。武将としてどうしようもない顔がスッと素になったときの表情に知的さと不敵さが出せる。狂言師としての見せ場もたっぷりだ。言い方は悪いが、日ごろ農民たちを手懐けていざというとき利用し、武ではなく“おどけ”をもって敵を制す、この長親の役にこれほどぴったりの役者はほかにいない。

長親を取り巻く武将や農民のキャスティングもいい。新旧交えた顔ぶれで、それぞれの役によくハマっている。とくに佐藤浩市が、長親の幼なじみでもあり武門でも名を馳せた筆頭家老・正木丹波守利英を活き活きと演じている。硬派の武将が長親に振り回され弱り果てる様は佐藤浩市ならではだ。「皆、好いておるのだ、あの馬鹿を!!」の台詞がキマる。

エレファントカシマシによるEDは作品の雰囲気にまるで合わない。

マスター@だんだん