劇場公開日 2010年8月7日

  • 予告編を見る

「☆☆☆☆ 〝 彼女ではなく彼女たち ・ 映画は3日間に渡って《シル...」シルビアのいる街で 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0☆☆☆☆ 〝 彼女ではなく彼女たち ・ 映画は3日間に渡って《シル...

2024年3月13日
iPhoneアプリから投稿

☆☆☆☆

〝 彼女ではなく彼女たち ・

映画は3日間に渡って《シルビア》とゆう名前の女性を探し回る男の見た街の風景。

それぞれの始まりは、カーテン越しに映る車の明かりから始まる。
カフェの椅子に座り、見えるのは様々な女性たちの姿。

男と一緒に座り、何故だか深刻な表情をする女性。
かと思えば、楽しそうに男と話をしている彼女たちが居る反面。1人で無表情に佇んで居る女性も居る。

カフェだからお客さんの注文を受けるウエイトレスも居る。
彼にとっては、彼女も《シルビア》の候補の1人。

後ろ姿の《シルビア》候補はどうゆう女性なのだろう?
ひょっとしたら彼女は《シルビア》本人なのではないだろうか?
髪を後ろに束ねる姿を見ていたら、もういてもたってもいられない。
そっと回り込んで前から観察してしまう…。

そうやって彼は遂に《シルビア》を発見する!

1人1人の表情・仕草・笑い声や佇まい。
ここに映って居る女性全てが《シルビア》に他ならない。

本当の《シルビア》は一体誰なのだろうか?
観客が受け取る疑問が、最良のサスペンスにさえなっている。

現場音を最高に活かし、鳥の囀りから人々の話し声。人の足音や、子供達の遊ぶ声。教会の鐘の音に、路面電車が行き交うブレーキ音等が豊潤な音楽にさえなっている。

音楽らしい音楽は、流しの楽団の奏でるヴァイオリン等の響きが現場音に混ざり合い、実に不思議な効果も与えている。

《シルビア》を見つけた彼は、彼女を追い掛けるのだが…。

街を彷徨う男女2人。

最高にサスペンスが盛り上がり、延々と男女間での疑似恋愛が繰り広げられる。

男目線で見ていると、まるでベッドに誘い込んでは、ねっとりと女性を愛撫しているかな様に見受けられる。
それだけに、男受けする要素は高いと感じる。

この延々と続く長いシークエンスが圧巻で。彼女の姿を見逃すまいとする彼に、人々の交差する姿や、行き交う路面電車。更には入り組んだ路地が、嘲笑うかの様に立ちはだかる。

彼女の非難に傷心する彼だったが。6年前に会った酒場と同じなのか?
パンクっぽい彼女が映るが、次の場面では同じベッドに2人は居るのだが…果たして。

これは現在の場面なのか?それとも6年前の場面なのか?
はたまた彼の打ちひしがれた傷心風景なのか?
観客にとっては、《シルビア》なのか?とゆう疑問に続いて、想像力を掻き立てられる。

そんな彼の前では、楽しそうに水遊びをする若い女の子達。

益々、意気消沈してしまう彼。
駅のベンチに沈み込んでは考える。
この時、彼はなかなか気付か無いのだが…。

最後の編集による硝子越しのショットは最後のサスペンスでした。

たった一度しか観ていないのですが、色々と気になる場面は数多い。
同じ位置から2〜3回と何気なく人々が行き交い、生活感あるショットが存在する。
分かり易いショットとしては、彼女と別れる時と、映画のラストショットが同じだし。路上で酒瓶を投げる、女の浮浪者らしき人物が居る場面が在るが。次にその場所が映る時には、酒瓶の音は聞こえるのだが、その浮浪者らしき人物の姿は映らない。

勿論《シルビア》を尾行する場面では、《シルビア》を見失う場所と、《シルビア》を見つけ、再び尾行する場所が同じ路地であったり…と。

実は、事前にキネマ旬報に載っていた監督自身のインタビュー記事を、先に読んでしまっていたので。この辺りの場面等は、ひょっとしたら小津安二郎の『東京物語』の影響が有るのだろうか?

個人的には、彼が街を彷徨う場面で。やはり2度登場する薬を撒く2人には、ルキノ・ビスコンティの『ベニスに死す』との関連性が果たして有るのか?…が気になった。

観客の想像力を最高に掻き立てる作品です。

2010年8月9日 シアター・イメージ・フォーラム/シアター2

コメントする
松井の天井直撃ホームラン