劇場公開日 2011年5月28日

プリンセス トヨトミ : インタビュー

2011年5月23日更新
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中井の父・佐田さんが急逝したのは37歳。父に関する記憶はまったくないそうで、「親父がいなくて思うのは、後姿を見せてほしかったということでしょうか。真田にもどこか共通しているような気がするんですが、子どもに選択肢を与える。特に、男の子に選択肢を与えるためには、親父の後姿ってすごく必要だと思うんです」と話す。そして、「自分の進路を決めようとするとき、『オレは親父のようにはなりたくない』と思うのか、『親父のように生きたい』と思わせるか。それは教えてくれることではなく、後ろ姿を見てどう思えるかなんじゃないかな」と丁寧に言葉を選びながら説明した。

だからこそ、劇中で大輔と向き合うべきポイントで、真田はえも言われぬ存在感で息子を導く。「真田は、大阪に伝わることをしっかりと子どもに見せていく。その部分の価値観は、僕とすごく合っていた気がします。誰にも言っていないですけれど、(オファーを引き受けたのは)台本を読んだときに感じたその部分が大きかったですね」

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中井は、これまで同世代の仲間たちに言ってきたことがある。「『死ぬなよ。子どもができたら、絶対に死ぬな』ってね。格好よく生きなくてもいいと思うんですよ。今、子どもを導けない世代が大人になってしまっている。でも、子どもは導いてもらいたいと思っているんですよ。そこを今回の役で伝えられたらいいなと考えていました」

最近は、佐田さんが出演した作品を見る機会が増えたという。子どものころは父の影を追いながら見ていたといい、「『君の名は』などを見ると、『なんだ、このメロメロした感じは!』と思ってみたり」と笑う。また、父と芝居のクセが似ていることを明かし「DNAなんでしょうね。自分の作品を見て『ここ、ダメだ、もう……』と落ち込むところがあるんですが、親父の作品を見ても同じところで『親父、ここダメなんだよ、もう……』と思いながら見ているんですよ。ハラハラして親父の作品を見るようになりましたね」と思いを馳せる。

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30年前、当初は俳優になるつもりなどまったくなかった。成蹊大学入学時は、「いずれは商社か広告代理店に行くのかなと思っていました。だから、俳優という職業に関してあまり考えずに業界に入ってしまったんです」と語る。それでも、同年代の佐藤浩市や真田広之らと切磋琢磨(せっさたくま)しながら親交を深め、中国映画「鳳凰/わが愛」(07)では主演とプロデューサーを兼ねる大役も果たした。

そして、映画をひとつの文化としてとらえたとき、決定的な思いが中井をとらえた。「日本は経済を優先しながら、どこか文化をおざなりにしてきたところがある。政治や政治家は国境を超えられないけれど、文化人は国境を超えられる。武器が国境を超えられなくても、映画は必ず国境を超えられる。僕はいつもそう思っている。上に立つ人たちがもっと余裕をもって、文化を育成していくことをバカにしないでもらいたい。それが、アジアをひとつにまとめていくときに、どんなに大きな役割を果たすかに気づいてもらいたいですね」

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