劇場公開日 2011年4月29日

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スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団 : 映画評論・批評

2011年4月26日更新

2011年4月29日よりシネマライズほかにてロードショー

ポップカルチャーにどっぷり浸かった若者の日常が反映された21世紀のミュージカル映画

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最近ではすっかり廃れてしまったけれど、かつてミュージカル映画は人気ジャンルのひとつだった。ミュージカルとは物語のなかに登場人物による歌唱が織り込まれた独自の形式で、登場人物たちは気分が高揚すると歌とダンスで自らの感情を表現することになる。歌唱パートが終了すると、まるで何事もなかったかのように普通のドラマに切り替わるため、初めて観る人は面食らうかもしれない。

スコット・ピルグリム」の魅力を説明するのは非常に難しいが、ひとことで言うなら新種のミュージカル映画だ。平凡な若者が運命の女性と出会ったことで、7人もの元カレ(女性を含む)と対峙しなくてはならなくなるというストーリーで、基本的には青春コメディなのだが、元カレが登場するたびにミュージカル場面に切り替わるのだ。

しかし、この映画の主人公たちは美しい歌声を披露するわけでも、華麗なステップを踏むわけでもない。突然「ストリートファイター」のような格闘ゲームのキャラになりきって、非現実的でファンタスティックなバトルを繰り広げるのである。そして、決着がつくと、何事もなかったかのように元の生活に戻っていく。奇をてらっただけのような演出に見えながらも、ある年齢層の観客のハートを掴んで離さないのは、テレビやゲーム、映画といったポップカルチャーにどっぷり浸かって育った彼らの日常がしっかり反映されているからだ。まさに、21世紀のミュージカル映画と言えよう。

小西未来

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