劇場公開日 2012年1月21日

  • 予告編を見る

「無用に長いシーンもあって、もう少しシェイアップしたほうが、緊迫感が際立ったものと思います。」預言者(2009) 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5無用に長いシーンもあって、もう少しシェイアップしたほうが、緊迫感が際立ったものと思います。

2012年10月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 2時間半と長かったフレンチ・ノワール。
 不満なのが邦題の付け方ですね。確かに主人公は殺人を経験することで、殺した相手の幻覚に惑わされて、その幻覚の語ることが預言にはなっていました。それが主人公を助ける一面にはなっていましたが、あくまでエピソードの一部。なぜ幻覚がつきまとうのか。なぜ幻覚の語ることが当たるのか、ネタバレしないで終わってしまいました。

 メインストーリーは、主人公はアラブ系の青年が獄中で闇社会の人脈を拡げてのし上がった行く成り上がりの物語です。ノワールにしては、派手なアクションやバイオレンスシーンが少ないということです。それでも本作を熱心に推薦するレビューワーが多い理由として、登場人物の感情描写が凄いことと、義理人情に縛られない主人公の処世術をドライな視点で描く新鮮さが評価されていることではないかと思います。

 ノワールとして斬新なのは、主人公がアラブ系移民の青年であること。これまでは、こうしたアラブ系は敵役で登場することが常でした。けれども本作は、それを主役すえ、しかも囚人たちの勢力争いが激しい刑務所内で、アラブ人のグループでなく、コルシカ・マフィアの幹部に気に入られて、そっちのグループに組み込まれてしまうのですね。

 コルシカ・マフィア幹部の言いつけ通りに、アラブ人のグループに潜入して情報収集している主人公の姿を見ていると、幹部の犬に成り下がっているように見えます。けれども、主人公のなかに徐々に民族としてのアイディンティと自尊心が芽生え始めると、奴隷のようにアゴで濃き扱う幹部に対して、復讐心を密かに抱いていったのです。
 巨大なマフィア組織を手玉にとって、鮮やかに幹部に対して復讐を成し遂げる主人公の手口には喝采を送りたくなりました。

 長い尺の中では、事細かに刑務所内の日々が描かれます。面白いのは、模範囚のに特権。主人公は、「外出」や「外泊」の許可を利用して、娑婆のマフィア組織のサポートもあって、短時間に外で様々な幹部の指示をこなしていきます。調子に乗って、独自に麻薬の取引に手を出したりすることも。

 全体としては、無用に長いシーンもあって、もう少しシェイアップしたほうが、緊迫感が際立ったものと思います。

●Intr

流山の小地蔵
TheNickさんのコメント
2020年4月3日

原題のプロフェットも預言者という意味ですよ

TheNick