劇場公開日 2010年5月28日

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プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂 : 映画評論・批評

2010年5月18日更新

2010年5月28日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー

取り返しのつかぬ過ちを修正する、皮肉に満ちた贖罪のファンタジー

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肉体派に改造され思わぬ魅力を引き出されたジェイク・ギレンホールは、影が薄いヒロインの存在を補って余りある。ブラッカイマーが目をつけた次なる鉱脈は伝説的なアクション・ゲームの映画化。矢継ぎ早に繰り出されるチェイス&バトルは言うまでもないが、ここには近年彼が手掛けたヒット作の要素がセルフパロディ的に散りばめられている。カリブの海賊ならぬ砂漠の王子はパートナーと愛憎相半ばでもつれ合い、世界を変えるトレジャー探しに躍起になり、はたまた、デジャブする過去を変える荒技まで繰り出すわけだ。

しかしドラマの名手マイク・ニューウェルは、単なる大味のCGファンタジーで終わらせなかった。古代ペルシャ王に見初められ養子となった王子ダスタンが、親族と共に聖地を制圧する。派兵のきっかけは、敵国への武器供与という未確認情報。その証拠を示すよう求めた王は毒殺され、嫌疑を掛けられたダスタンは追われる羽目になる。ありもしない武器隠しと無実の罪。疑うと同時に疑われる立場を思い知る二重のダウトが、一筋縄では行かぬ展開へと導く。そう、メインプロットは「グリーン・ゾーン」と同じく大量破壊兵器をめぐるデマ。数分だけ過去に戻って過ちを修正できる“時の短剣”を駆使し、取り返しのつかぬ戦争を始めたアメリカへ大いなる批判の刃を向けるのだ。あの恥ずべき戦争は無かったことにしたいーーそんなアメリカ人の深層心理を感じさせる本作は、イラク侵攻への贖罪の念を込めた切実な同時代の神話である。

清水節

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