劇場公開日 2009年9月12日

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TAJOMARU : インタビュー

2009年9月14日更新

小栗旬のインタビュー動画(隔週)、監督、プロデューサー、共演者の各インタビューをお送りしてきたeiga.comの「TAJOMARU」8週連続特集。第8週の最終回は、隔週で全4回にわたって配信してきた小栗旬の動画インタビューの総集編をお届けします。(取材・文:編集部)

小栗旬 スペシャルインタビュー総集編
「自分の正義を貫くのではなく、それを一回捨てることが出来ればいいですね」

様々な人間の思惑によって振り回された畠山直光は、最終的に多襄丸として生きていくことを選ぶ
様々な人間の思惑によって振り回された畠山直光は、最終的に多襄丸として生きていくことを選ぶ

──出演作を決めるときに大事にしていることは何でしょうか?

「ひとつでも自分の中で乗れるものがあればいいんですよね。監督、出演者、スタッフ、脚本……なんでもいいんで何かひとつ、自分が気に入って、やってみたいと思えることがあれば、それだけで乗れるんですけどね」

──撮影に入る前がすごく大変だったと聞きましたが……。

小栗旬 次回作では映画監督に挑戦
小栗旬 次回作では映画監督に挑戦

「市川森一先生の脚本はすごく面白かったんですが、あとから改稿に次ぐ改稿で、脚本が少しずつ変わっていって、とにかく脚本の完成が凄く遅れたんですよ。やっぱり役者としては台本が出来上がらない現場に入ることほど不安なことはないので、例えば、それが是枝裕和監督のような台本が無いスタイルで撮る監督の作品なら、また臨み方は違うと思うんですけどね。だからちょっと入るまでは大変だったですね」

──今回の作品は、芥川龍之介の「藪の中」(黒澤明監督『羅生門』の原作)を大幅に改稿したシナリオでしたが、読んでみての感想は?

「面白い解釈だと思いました。ただ、結局『藪の中』を題材にさせて貰っているとはいえ、全然違うものだと思いますし、ある意味『多襄丸』という名前だけを受け継いだだけの作品だと思いますけどね」

──小栗さんからみて、直光/多襄丸とはどんな人物でしょうか?

「映画では、多襄丸というキャラクターに生まれ変わりますけど、畠山直光自身はすごく可哀相な人だと思いますね。彼の人生は生まれたときからある程度決められてしまっていて、その人生に抗うこともなく、一人の女性を愛し抜いていくことこそが自分の人生にとっての幸せだと思って生きてきたわけです。しかし、そこで起こらなくてもいいはずの兄弟喧嘩が起こってしまい、そこから思いも寄らぬ遠回りをしなければいけなくなる。要するに様々な人間の思惑によって振り回されてしまう人なんですよね」

──直光/多襄丸を演じてみて、自分との共通点はありましたか?

「共通点はあまり無いかもしれないですね。ここまで真っ直ぐにひとりの女を愛することも出来ないと思いますし、彼のように身分が良いわけでもないですしね。何よりも直光は哀しすぎます」

──直光/多襄丸を演じるに当たって、気をつけたことは?

「今回はプロデューサーが舞台のような映画を撮りたいということから、この作品がスタートしたと聞いたので、自分としても普段映像で自分が選択する芝居とは違う、演劇的要素を織り交ぜつつ演技を組み立てました。それと同時に、マスターショットを何本も頭から最後まで撮って、それから寄っていくという撮影方法だったので、何度同じことをやれと言われても、同じモチベーションで出来るようにしようということは現場で気をつけてました」

──松方弘樹さん、近藤正臣さん、萩原健一さんら大御所の俳優さんとの共演はいかがでしたか?

松方弘樹をはじめとする3人の名優 からは多くのことを学んだという
松方弘樹をはじめとする3人の名優 からは多くのことを学んだという

「今まで生きている時代も時間も違うので、それぞれの方が刻んできたものを現場で肌で感じることが出来て良かったと思いましたね。やっぱり三者三様ですし、皆さんそれぞれスタートの形も違ければ、芝居に対する取り組み方も違う中で、演じていると思うんですけど、お三方それぞれにすごい魅力があって、色々勉強になりました。

特に松方さんとは立ち回りを一緒にやらせてもらって、多くのことを学びました。僕らは世代的に刀を振り回すことがあまりなくて、この映画に出てくるような立ち回りのシーンが時々あると、その都度練習をして、ちょっとだけ上手くなって、また忘れていくみたいな感じですけど、松方さんたちは1年間刀を振り続けている時代を何年も過ごしている方たちなので、やっぱり対応の仕方が全然違うし、何が来ても大丈夫っていう印象を受けましたね。そういう方と一緒にやらせてもらったのは今後の自分にとってすごくプラスだったと思います」

──小栗さんが考える、映画「TAJOMARU」のテーマとは?

「映画全体のテーマであり、今僕らが生きている世界のテーマでもある思うんですが、『正しいことがすべてではない』という萩原健一さん扮する将軍足利義政の台詞があるんですけど、それが僕らの世界というものを言い表していると思います。続けて将軍は『正義なんてあってないようなもので、追い続ける幻だ』と言うんですけど、本当にそのとおりだなと。

やっぱり人間生きていると自分の中の正義を貫こうとしてしまいますが、それを一回捨てることが出来ればって思いますね。この映画には絶対悪の存在は出てきません。ただそれぞれの正義が違う形でぶつかり合ってしまっていて、そこを折れておけば、もう少しみんな楽に生きられたのにっていう映画ですよね。それが、いま世界中で起こっている戦争だったり、内紛みたいなものにつながっているような気がしますね」

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