劇場公開日 2009年2月7日

「「いままでにキス何回くらいしただろう」と囁く夫」余命 カサキショーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0「いままでにキス何回くらいしただろう」と囁く夫

2009年4月27日
鑑賞方法:映画館

泣ける

病に伏せった女の前にようやく男は現れた。
近づく男の胸元を女は力一杯 叩く。叩く。叩く!
そして抱きつく。
「頑張ったね。怖かったろう」 男の言葉に女は応える。
「怖かった、もう帰って来ないのかと思った。」
半年前、女は子供を産む決意をした。
だがそれは自分の身を犠牲にする覚悟でもあった。
彼女の体には乳癌が再発していたのだ。
治療すればもう子供を産むチャンスはなくなる。
自分の身体と引き換えに故郷の奄美の夕陽のもとで
彼女は子供を産む覚悟を決めたのだった。

映画の出来栄えは
最初は低空飛行、どうなることやら、心配してしまった。
後になってその理由の一端がわかった。
松雪さんの演技が固いのだ。
女流作家、谷村志穂の描く主人公の滴(しずく) になろうとするあまり、
観客を置いてきぽりにして、
自分だけなりきってしまっていたのだ、と思う。

夫役の椎名桔平がマツユキさんに囁くように
「いままでにキス何回くらいしただろう」なんてキザな言葉を
囁いているシーンが何度かあったが、
こんな言葉をさらっと言える男はどれ程いることだろうか、
なんて事を考えながら観ていた。

カサキショー