「とってもいい。」ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0とってもいい。

2022年10月10日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

演技ではない生の人間ドラマ。
こういうの大好きです。

オーディション物や、コンクールのドキュメント。いつも身を乗り出して観てしまう僕です。
「ローザンヌ国際バレエコンクール」やピアノの「ショパン・コンクール」も釘付けです。
パイプオルガンのコンクールは、予選〜本選と3日間、朝から夕方まで会場のホールに詰めたことあります。
何がいいと言って、彼らが命がけで目差してきた芸術の道を、審査員と観客の前で、その一瞬に賭けようという、正念場の美しさに打たれるからです。

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先日、東京へ行くついでに下北沢の小劇場へ寄った。
「人間が見たい」、「人間を見たい」。
・・望みはそれだけだった。

少しく人間関係に疲れていたこともあって、何か、確かなものが見たかった。
バーチャルでなく、スマホやモニターやスクリーンの画面からでもなく、肉体の躍動と肉声、ほとばしる汗と足音の振動、そして何よりもひたむきな生の有様を客席からかぶり付きで見たかったのだ。
行って良かった。

「人間を見たい」と言っても
毎日毎日、職場で人に揉まれて生きてはいるのだが、そういう業務上の相手ではなく、何か高みを目指して、芸術に夢中になって輝いている人間。すべてをそこに注いでいる人たちの姿、それを見たかった。あれはいい。本当にいい。
疲弊していた自分の内にも、彼らと同じ肉体と精神が宿っていることが嬉しくて、沸々と息を吹き返して帰ってきた。

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この映画は、
「コーラスラインという『オーディションをテーマとした演目』を上演するためにオーディションをする」という、舞台裏のドキュメンタリー。

涙あり、笑いあり。
8ヶ月もかけての失意と歓喜を分け隔てる合格者発表があって・・
演目ごとに厳しいオーディションが行われるミュージカルの本場=ブロードウェイの本物志向には感服だ。

またもう一度ニューヨークで生の舞台を観たいと思った。

この3年間、舞台芸術は大きな試練の時を味わった。
コロナウイルスの禍から復活していくアーティストたちに、そして我ら人間の存在に、幸多かれと祈る。

きりん