劇場公開日 2009年5月29日

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ラスト・ブラッド : インタビュー

2009年5月18日更新

本作の原作は日本が世界に誇るアニメ制作会社、プロダクションI.Gの「BLOOD THE LAST VAMPIRE」。今回は、「ラスト・ブラッド」を製作し、「グリーン・デスティニー」などで世界的にも成功を収めている名プロデューサーのビル・コンと、プロダクションI.G(以下I.G)を広く世に知らしめ、経営者としても注目を集めている同社社長の石川光久の2大プロデューサーに語ってもらった。(取材・文:編集部)

ビル・コン×石川光久 プロデューサー インタビュー
「世界中のプロデューサーが、I.Gと組みたいと思っているはず」(ビル・コン)
「原作アニメが生まれて約10年。海外に対してドアが開いた」(石川)

実写版プロデューサーと原作プロデューサー、それぞれの思いとは?
実写版プロデューサーと原作プロデューサー、それぞれの思いとは?

――今回の映画は、ビル・コンさんから石川さんに話を持ちかけたということで良いでしょうか?

コン:「01年に『BLOOD THE LAST VAMPIRE』を試写で見てすぐに、ぜひとも実写にしたいと思い、石川さんに働きかけました。初めて見た時から、実写にしたいと思わせる作品でした」

アジアから世界を見据える ビル・コン(左)と石川光久
アジアから世界を見据える ビル・コン(左)と石川光久

石川:「実はハリウッドからも実写化の話はあったんですが、ビル・コンさんがこれまで作ってきた映画や、取り組む姿勢を見て、この人にだったら任せられると思い、実写化を進めることになりました」

――おふたりの間で、交渉はスムーズに進んだということでしょうか?

コン:「細々とした法律上の問題もありますから、実際の交渉は弁護士の先生にお任せしましたが、私たちのレベルに関しては、大変スムーズにいきました。おおまかなことはすぐに合意に至りました」

――石川さんは原作者側として、何か要望は伝えたましたか?

石川:「もともとI.Gという会社は、あまり原作を忠実に映像化する会社ではないんです。例えば、士郎正宗さん原作(講談社刊)の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の場合も、“漫画とアニメは違うから、アニメーションで最大に効果を出せる演出方法で作ってほしい”というのが士郎さんのご意見で、我々を信頼して任せてくれている関係です。それと同じことで、今回はビル・コンさんを信用し、全て任せるというのがI.Gとしてのスタイルでした」

――完成した映画をご覧になっていかがですか?

石川:「原作をすごくリスペクトしてくれているなと思いました。自分たちが作ったものをよく観察し、尊敬の念を抱いて作ってくれたということは、原作に関わったスタッフたちも強く感じています。ただ、原作アニメの企画の中心でもある押井(守)監督は、自分で実写版を監督したかったので、これを見た時もやっぱり自分がやりたかったと言ってましたけど」

――今回は香港とフランスの合作映画ですが、ビル・コンさんはハリウッドとのコネクションもある中で、フランスのパテ社を製作パートナーに選んだ理由は?

冒頭の地下鉄での戦いなど、原作アニメの再現度も高い
冒頭の地下鉄での戦いなど、原作アニメの再現度も高い

コン:「パテ社はフランスで『攻殻機動隊』を配給し、記録的ヒットだったということがありますが、私が配給を薦めたということもあって、そのつながりがありました。同時に、私はフランスの映画会社と映画を作ったことがなかったので、チャレンジしてみたいという思いもありました。そして、さらに言えば、フランスのプロデューサーのほうが、原作をリスペクトし、忠実である傾向があります。アメリカのプロデューサーは、そのあたりをどう扱うかわからないという怖さがありました。今回の映画を作るにあたり、オリジナルに敬意を払いたいという気持ちがとても強かったのです」

――アメリカのプロデューサーについて、石川さんもそう感じることはありますか?

石川:「アメリカの場合は企画を塩漬けにしてしまうというか、とりあえず権利を5年間とか所有するんですけど、その間に現実にするというところでは、いろいろ難しい。加えて『BLOOD THE LAST VAMPIRE』はアジアの心理的な描写も多いので、そのあたりも理解して作れる人でなければ、実現できなかったと思ってます。もし、今回の実写化をアメリカに託していたら、作る過程も完成する脚本に対する見方も、全く違ったものになったと思います」

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インタビュー3 ~実写&原作アニメのプロデューサー、ビル・コン×石川光久に聞く(2)

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