劇場公開日 2008年4月5日

「合唱シーンは観る価値あり。ギャグと「奇跡」は不自然さが残るかも・・・」うた魂♪ ジョルジュ・トーニオさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0合唱シーンは観る価値あり。ギャグと「奇跡」は不自然さが残るかも・・・

<ストーリー>
かすみは合唱部のソプラノパートリーダーをしている、ちょっと自意識過剰な女子高生。自分では歌の才能もあり、おまけに可愛いと思っている。ある日片思いをしている牧村から、「歌っている君を写真に撮りたい」と言われ超有頂天。

後日撮影も終わり、早速写真を見せてもらうがどれもかなり変な顔で写っている。自分が歌っている時の顔が変だということに、初めて気付いたかすみ。おまけに牧村からは信じられない言葉を言われる。

すっかりやる気を失くしたかすみは、夏祭りの合唱祭を最後に退部しようと考えるのだが、そこで観た目はヤンキーな他校の合唱団に挑戦状を叩き付けられ、彼らのステージを観ることに・・・

<個人的戯言>
私がこの映画を観ようと思ったのは、夏帆のファンな訳でもなく、合唱というテーマに惹かれたからです。かつて観た、同じ合唱を扱ったスウェーデン映画で味わった感動を、また観ることが出来るかもしれないというものです。合唱シーンはどれも悪くない出来だったと思いましたし、楽曲のクオリティー、そして選曲、思わぬ懐かしい歌声を聴くことも出来て、結構満足しています。

しかしストーリーの中のギャグはあまりに寒く、思わず心に「みんなのうた」の「北風貫太郎」が子供合唱団で流れ、ラストは期待していたものでもあったのですが、それがスウェーデン映画のラストのパクリ?と思わすもので、しかもどちらもかなり不自然・・・ストーリーもペラペラで、期待した私が間違っていたと思います。比較するのがそもそも無理か・・・

最初からギャグは♪北風ぴーぷー吹いていた♪という感じでしょうか?しかも夏帆の自意識過剰娘も含め、かなり不自然。これももっと突き抜ければ成立していたかもしれませんが、コメディエンヌの道は厳しいです(この映画の前に、「地上5センチの恋心」という映画の、ベテラン・コメディエンヌの演技を観たのでなおさら)。更に主軸となるストーリーもペラペラ。これもまた先日観た「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」の、バカだけどがむしゃらな青春とはえらい違い、と比較してしまいました。

合唱のシーンはよかったと思います。本人たちが相当練習はしたということで、普通にちょっとジーンとはしました。楽曲もゴスペラーズ、モンパチ、そして好きだった尾崎豊と、選曲的にも個人的に満足のいくものでした。また合唱ではありませんが、懐かしい人の歌も聴ける特典付き!これは観てのお楽しみ(ただし一定年齢の人限定の楽しみ)。しかしラストの奇跡の瞬間は・・・実はあれを待っていた、というか出てくることは予告等で予想は付いていて、それを期待していたのですが、それがあまりに不自然な感じ。さすがに会場にいるエキストラ・レベルに予算はかけられないのでしょうが、思いっきり「立たされている」感丸出しでした。

この映画のテーマが合唱で、かつて観た、同じく合唱を扱った、スウェーデン映画「歓びを歌にのせて」で味わった「奇跡」の瞬間の感動が、また思い出させてくれるのでは、というのがこの映画を観ようと思ったきっかけです。しかしラストの「奇跡」は、「歓び・・・」のようなドキュメントを観ているような感覚はなく、ストーリーも、閉鎖的な村社会等の背景を描いていた同映画と比較するのは、そもそも無理な話だったのです。

これは私の期待するものが、そもそも間違ったところにあったと考えています。ですのでこの作品を評価するのもおかしいのかも。所詮「戯言」ですのでお許しを。もう一度「歓びを歌にのせて」観よう~っと!

ジョルジュ・トーニオ