劇場公開日 2008年9月20日

  • 予告編を見る

「穴を開けては塞ぎ、穴を穿っては埋める」蛇にピアス きりんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5穴を開けては塞ぎ、穴を穿っては埋める

2022年1月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

金原ひとみ、
ずいぶんと若い子が芥川賞を取ったのだとニュースで知って、興味津々。

審査員のひとり石原慎太郎が記者の問いに答え
「三角のバツだ」、
と苦々しく言い放った映像を見て、これは!と書店に走ったことが懐かしい。

単行本ではどうしたことか結尾の語調がマイルドになってしまったから、あれは実に惜しい蛇足改訂で、
僕は初稿の受賞作(=文藝春秋掲載)の凄まじさ 荒々しさがたまらなかったですね。

映画化されてもちろん封切り時に鑑賞。

“自傷行為”は思い出させてくれます、
・・例え物理的なピアスやタトゥーでなくても、あれは若い日の僕たちの専売特許だったのかもしれないと。
心をえぐっていつも心臓から血をながしていたあの頃を。
お説教する大人たちは介入させずに、若者たちだけで魅せる原作の世界を。
自己の生への憎悪と、死の淵を覗きみたい衝動とで、ザクザクと自分を刺していたっけね。

金原と蜷川と吉高の三つ巴のタッグは見事に映像としてスパークしたのではないでしょうか

舌への「ゼロ番」穿孔・・
思わずスクリーンから目を落としてしまった僕でした。

心にぽっかり空いた虚ろな穴を満たしたくて、穴を開けてはピアスで塞ぎ、穴を穿っては入れ墨で埋める“シジフォスの苦役”が、他人任せではなく自分の体をキャンバスに、傷め付けながら確かめられるシーンは、しかり青年期ならでは。

熱演する吉高由里子や高良健吾を初めて知った作品でした。

(封切り時映画館鑑賞)。

・・・・・・・・・・・・

付記:
「三角のバツだ」とのたまわった石原も、「太陽の季節」では障子を突き破る描写があるので、金原に親いものを感じたはずと思う。
ピアスは性行為にどこか近いことも気付く。

生きている苦い証に 指を折り日数をかぞえる今月もまた
(林あまり)

正月映画 棚からひと掴みレンタル、
吉高由里子のラブコメ「婚前特急」につられて14年ぶり、久々に痛い再鑑賞。

きりん