劇場公開日 2008年1月26日

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「とてもいい映画」母べえ アマポーラさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5とてもいい映画

2008年2月24日

泣ける

悲しい

自伝の映画化というだけあって、時代をきちんと描写していて好感が持てる。時代をきちんと活写しているだけに、その中で繰り広げられる物語が信憑性を持ち、観客に直截的に訴えかけている。戦時下に於ける思想犯の夫、そしてその妻、二人とも決して思想らしい思想を何一つ語るワケではないが、彼らの周辺にその逆の立場を語らせることで、夫婦の正しさ、一途さが却って浮き上がる仕掛けになっている。
浅野忠信は頼りなくも頼もしい実に愛すべき人物像を好演している。また、吉永小百合もすばらしい。彼女の体内に、あたかも永遠に住みついているかのような天性の優しさが本映画でもくっきりと滲み出ている。最終シーン近くで「死」が連続して取り扱われるが、全体のトーンはあくまでも温かい。名台詞はないし、これといった見せ場も見当たらないが、とてもいい映画だと確信を持って言える。個人的には、都会の家の玄関脇にあった鶏小屋が強く印象に残っている。あんな家に住んでみたい。

アマポーラ