劇場公開日 2010年12月10日

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「どのカットも構図と色彩が美しい」ロビン・フッド マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5どのカットも構図と色彩が美しい

2010年12月15日
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鑑賞方法:映画館

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この作品で描かれるのは、シャーウッドの森に住む伝説の義賊としてのロビン・フッドではなく、フランスの侵攻からイングランドを救った闘いのカリスマとしての活躍と、彼が無法者として扱われるいきさつを物語ったものだ。
ロビンの高潔な魂と人心を捉える指導力がどこからきたのか、その原点を垣間見せるエピソードも盛られ、新たなロビン・フッド伝説として楽しめる。
ラッセル・クロウも、役作りのため身体をシェイプアップしたように見える。
12世紀末のヨーロッパ史を背景にしたスペクタクル作品だが、十字軍の遠征から離脱して母国への帰還と、見知らぬ土地ノッティンガムを再興するという、比較的、大人しめな内容で話が進む。それが一転して、南部の海岸に於けるフランス軍上陸阻止の戦いに転ずる演出がいい。ケイト・ブランシェット演じるマリアンも、領土でロビンの帰りをじっと待つなんて真っ平とばかり戦闘に加わり、いささか場外乱闘ありの様相だが、フランス軍の上陸シーンは「史上最大の作戦」を彷彿させる。
島国イングランドが海岸線を死守するのは当然の成り行きで、まさに死闘が繰り広げられるが、人馬が蹴散らす水しぶきが美しい。この場面に限らず、全篇、どのカットも構図と色彩が美しく、映画というよりスチールを観ているようだ。リドリー・スコットの作品は、現代劇に於いても、本業は写真家ではないかと思えるようなカットが多く、動画の基本は静止画にありと言える数少ない監督のひとりだ。
人物配置、物語の進行、音響効果など、少し器用にまとめすぎた感はあるが、愚かなジョン王などキャスティングがよく、ロビンの弓の名手としての見どころもあり、今までとひと味違ったロビン・フッド伝説として見応えがある。
残念なのは、同じくリドリー・スコット監督とラッセル・クロウによる「グラディエーター」(2000)に比べると、骨格が細く作品が小ぶりになったこと。マリアンとのロマンスにウェイトが傾いたぶん軟弱になったようだが、ケイト・ブランシェットの魅力を思うと痛し痒しだ。

p.s.1 ラッセル・クロウとケイト・ブランシェットのコンビは安心して観られる。なぜなら、どちらも死にそうにない。

p.s.2 ジョン王のなんと愚かなことか。部下の功績を讃えることは、就いては自分の功績として世に知れ渡る。このことが判らない上司はいつの世も“失格”の烙印を押される。

p.s.3 この物語から先、繰り返されるドーバー海峡を挟んだ攻防と、やがて大海の覇権を巡る海戦へと発展する英仏両国は数百年も敵対関係になる。それが、20世紀に入って両国がトンネルで結ばれようとは、さすがのロビン・フッドも考えもしなかったろう。

マスター@だんだん