フォロウィングのレビュー・感想・評価
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時系列いじり
全編モノクロ映像。時系列バラバラ。『メメント』の監督クリストファー・ノーランのデビュー作なのだ。ストーリーは警察で告白するビルから始まり、その告白に終わる。
本編ではビルがコップに出会い、空き巣を繰り返すシーン。ビルが金髪の女に惹かれ、バーで口説き関係を持つシーン。コップが女と出来ていて、ビルをハメようとするシーン。ビルがクラブオーナー宅に侵入して金庫の封筒と金を盗むシーンの4本ライン。時系列だけではなく、殴られた顔や切った髪などによって、登場人物を把握しにくくしてあるところが憎い演出だ。
結局、コップにハメられっぱなしのビルだったけど、何でも素直に信じてしまう性格のため、小説を書いてもつまらないものになりそうだ。コップが最後まで何を考えてるのかわからないところも不気味でいいのだけれど、結局のところ、目的がなんだったのかハッキリしない。素直すぎて警察に自首するビルもよくわからん・・・哀れにも尾行趣味のために、最初から最後までハメられっぱなしのビル。女にもハメたのだけが唯一の救いだ(ベッドシーンなどないけど)。
悪いのはどいつだ
メメントで一躍その名を馳せたクリストファーノーランがその3年前に作り上げたインディームービー。
監督、脚本、製作、撮影、編集の5役をクリストファーノーランがこなすブラック采配で、たった4人のキャスト、たった6000ドル(多く見積もっても100万円以下?)の製作費で評価、興行収入ともに好記録をマークし、各映画祭でヒッチコックが再来したとも噂されたほどの作品だったらしい。
キャストに有名俳優を起用することなく、プロットさえ良ければ映画は面白くなるといった極論を体現したような内容。
のちのメメントにもみられた時系列をシャッフルし、徐々に物語の概要と謎が明かされていくといった展開。
ただモノクロの映像と前述の無名キャストの採用の件もあってか、一回見ただけではおそらく理解出来ない笑。
現行で世界最高峰の映画監督の1人であるクリストファーノーランの処女作といった意味ではファンは押さえておくべき一本ではないだろうか。
低予算なのにさすが。
歯車を回す大工場のような都市は、人を本質的に無個性にし、温順に生きることを強いる。
そんな社会の中で、主人公は自分は社会的成功者ではないけれど「まっとうな人間」だと思っている。
そして、自分の「平凡さ」「実直さ」「好奇心」を言い訳にして、日常の延長にある犯行を重ねる。
理想像のような男コッブは、インテリな傲慢さで主人公を支配し、容赦なく破滅へと導く。
社会に自我を巻き取られることと、強い者にたやすく利用される弱さは、根っこが同じかもしれない。
ドストエフスキーの「分身」を連想した。
ヒッチコック映画のような作品
まるでヒッチコック映画を観ているような感覚になりました。見どころはバラバラになっている時系列ですね。最初はついていくのに精一杯だったのですが、話が進むにつれてパズルのピースが徐々に揃っていき、ノーランらしいラストには脱帽です。複雑さがより話にメリハリをつけています。とてもクールな作品でした。
犯罪の美学
時系列や伏線の使い方にばかり目が行きそうになるけれど、魅力はそこだけじゃない。
人間の描き方がとてもうまいなと、本当にそう思う。
自分に自信のない人間は、自分なりの価値観や哲学を強く持っている人間の言葉を信じてしまいたくなる。それが、たとえ泥棒の言葉だとしても。
クールな口調で物事を瞬時に判断し、自分の決めたルールや美学は崩さず、そしてときに感情的になる人間らしさもある。憧れるでしょう、普通。
そしてそれは犯罪という非社会的な行為から生まれる言葉だからこそ、妙な説得力がある。
言葉は強い。
そして、怖い。
知性派監督の挑戦状。
数年ぶりに鑑賞。
「インセプション」までを観て思ったのですが
ノーラン作品は“どうだ、ついて来れるかい?”という
ある種の自信やナルシズムを感じます。
ただ、それが鼻についたり観客を置き去りにするのではなく、
そのさじ加減が絶妙であるがゆえに
私たちの想像力を刺激して
“次の作品を一日でも早く見たい”、
そんな風に思わせるのではないでしょうか。
今作はタランティーノにより
“すでに使い古されたかのような時間軸をずらす手法”を
とっています。
それが観客を混乱させます。
白黒映像で、しかも似たような場面が続くため
状況が分かりづらく物語についていくのに必死です。
フィルムノワールを撮りたかっただけではない、そう私は感じました。
集中力が途切れれば興味を失う観客も出てくるのに
ノーラン監督はあえて挑戦しています。
まるで“ついてこれる奴だけ付いてこい”と言っているかのように。
そしてラスト。ご褒美が待ってます。
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