劇場公開日 1972年7月20日

「自由を謳歌した先にあるアメリカ(映画)の未来に絶望する群像劇の衝撃度」ラスト・ショー Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自由を謳歌した先にあるアメリカ(映画)の未来に絶望する群像劇の衝撃度

2022年2月19日
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鑑賞方法:映画館

これはノスタルジックな作品でありながら、アメリカン・ニューシネマの延長線上に置くことが出来る新しい感覚を持った映画だ。好みで言えば2年後の「ペーパームーン」が断然上だが、描かれた赤裸々な人間群像の切実さと時代を映し出す映像の緊張感のアメリカ映画らしさの点では力作だと思う。ここ10年の間のアメリカ映画の中では最も衝撃を受けた。大胆にして厳しいボグダノビッチの演出タッチに面食らいながら、この絶望的な物語の未来はどうなるのだろうと思いを馳せる。ただ欲を言えば、編集に不満を憶えたし、シビル・シェパードはミスキャストだと感じた。
それ以外の出演者は役柄に合っていると思う。ティモシー・ボトムズとジェフ・ブリッジスはテキサスの田舎の青年らしく、ベン・ジョンソンとクロリス・リーチマン、エレン・バースティンは貫禄と味のある演技を見せてくれる。この役者への演出を観ると、如何にボグダノビッチ監督が映画好きか分かるだろう。特にサムを演じたベン・ジョンソンの役柄に感じる。アメリカの、またはアメリカ映画の活気があった時代を知るサムの突然の死が、主人公の若者たちに多大な影響を与える。欲望の赴くままに生きてきたアメリカの青春の終わりは、その自由を謳歌すると同時に未熟で未練がましく、何処か寂しい。これでいいのだろうか。

  1977年 1月29日  池袋文芸坐

私のこの映画の評価は衝撃度の大きさ故もある。私が尊敬する映画批評家でも評価が2分化していた。飯島正氏と淀川長治氏はベストテンに選出していない。代わりに清水千代太氏と野口久光氏、双葉十三郎氏は高評価だった。

Gustav