水の中のナイフ

劇場公開日:

水の中のナイフ

解説

イェジー・スコリモフスキー、ヤクブ・ゴールドベルク、ロマン・ポランスキーの共同脚本を新鋭ロマン・ポランスキーが監督した恋愛心理映画。撮影はイェジー・リップマン、音楽はクシシュトフ・コメダが担当した。出演は「夜行列車」のレオン・ニェムチック、新人ヨランタ・ウメッカ、ズィグムント・マラノウィッチなど。

1962年製作/94分/ポーランド
原題:Nóż w wodzie
配給:マーメイドフィルム
劇場公開日:2013年6月8日

その他の公開日:1965年6月1日(日本初公開)、1979年11月、1998年6月

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

ストーリー

アンドジェイ(レオン・ニェムチック)は三十六歳。ワルシャワのスポーツ記者で、美しい妻クリスチナ(ヨランタ・ウメッカ)と安定した生活をおくっていた。彼らは週末を郊外で過すのが常だった。その日もヨットの上で週末を過すため湖に向って車を走らせ、途中ヒッチ・ハイクの青年を乗せた。三人は出帆した。朝食の時青年は愛用の大きなナイフを取り出した。水の上でナイフは場違いだったが、それ以上に青年の存在は場違いであり、青年の「若さ」とアンドジェイの「中年」が眼に見えない火花を散らした。アンドジェイは青年が妻に親切なのを見ると、彼に過酷な仕事をいいつけた。ヨットが帰途についた時、ナイフをアンドジェイがかくした。青年は彼に喰ってかかり、もみあううちにナイフは湖中に落ち、青年も足をすべらした。彼は浮いてこない。意外な成行きに、アンドジェイとクリスチナはののしりあい互いに幻滅と憎悪でいっぱいだった。アンドジェイが警察に知らせに泳ぎ去った後に青年が姿を現わした。クリスチナは最初は腹を立てたが、次第に青年の世話をやいた。そして彼の接吻を受けた。やがて湖畔に着くと、青年は走り去った。船着場にはアンドジェイが待っていた。二人は帰途についた。やがて何事もなかったように、またもとの生活にもどるだろう……。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第36回 アカデミー賞(1964年)

ノミネート

外国語映画賞  
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映画レビュー

3.5【クルージングに向かう裕福な知識階級の夫婦と突然現れたヒッチハイクの青年。彼らの閉塞したヨット上で過ごす2日間の感情の揺れ及び関係性の変遷をリアリズム溢れる描写で描き出していく作品。】

2023年9月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

知的

難しい

ー ロマン・ポランスキー監督の1962年の長編処女作 -

■ワルシャワのスポーツ記者で、美しい妻・クリスチナと暮らすアンドジェイは、週末を郊外のヨットの上で過ごすために車を走らせている。
 途中、ヒッチハイカーの青年と出会い、3人で出帆することに成り行きでなる。
 そして、ヨットという閉ざされた空間で、若者と中年3人の感情が揺れ動き始める。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・出演者は、裕福なクリスチナとその妻アンドジェイと貧しきヒッチハイカーの青年の3人のみである。

・だが、今作品は閉塞したヨットの空間の中で3人が過ごす中で、彼らの関係性の微妙な変化を描き出している。

・一見、幸せそうなアンジョイだが、奔放な若者の姿を見ているうちに、且つての若き夫の姿を見出し、彼に惹かれていく。

・一方、クリスチナは若者に対し、優越的な地位を誇示しようとするが、徐々にボロが出てくる。そして、若者を弾みでヨットから海へ落としてしまい、妻に責められ自ら海へ飛び込み青年を探すのである。が、青年は自らヨットに戻り、彼の身を案じていたアンジョイと口づけを交わすのである。

<今作を観ると、ロマン・ポランスキー監督のその後の数々の作品で描かれる人間に対するシニカルな視点が既に確立されている事が良く分かる。
 登場人物がたった3人の今作であるが、そこにはミステリアス要素もタップリと含まれ、観る側は徐々に不穏な気持ちになって行くのである。>

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NOBU

3.0倦怠と怠慢と嫉妬と・・・夫婦喧嘩は犬も食わない。

2023年8月8日
PCから投稿

売れっ子になったスポーツライターの夫と、苦学生時代から付き合っていた妻の週末の出来事。暮らしが多少裕福になった夫婦にはパターン化された日々が曲者。同じ時間に同じ事をし会話からはユーモアは欠如する。そこへ突如19歳の生意気盛りの若者が表れる。どういう訳か車に乗せヨットハーバーまで行く。そして、如何にも貧弱な自前のヨットを見せ、意味もなく若者をヨットに乗せてしまう。あくまで傲慢な態度で接する中年男は、さかりの付いた雄のプードルみたいに醜いが、若者は言葉で反抗するものの行動はいいなり。そして、そんな情況を欲求不満気味の女房は傍観し、ヨットは出帆する。
水上での密室劇。殺人でも起こりそうだと思わせぶりに若者はポケットからナイフを出す。
映画はチクタクと進む。何か起こりそうで何も起こらない。登場人物それぞれの鬱屈した気持ちが柔らかい棘のある言葉でやり取りされ観ている者を苛立たせる。時には暴力的になったり寛容なエセ牧師の気分になったり。終始苛立ちは温和な気分に変わらない。
ポランスキーの罠にしっかり嵌ったみたいだった。
せっかくの上機嫌が台無しなった。

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はる

4.0バカバカしい覇権争い

2023年8月2日
iPhoneアプリから投稿

若者がブルジョア夫婦と共に一泊二日のヨットの旅に出る。些細なものごとが原因で若者が海に落ちる。ブルジョア夫婦の夫は若者が死んだものと思い狼狽するが、妻は若者が生きていることを知っている。この至極単純な映画に求心力を与えているのはイニシアチブのめまぐるしい変転だ。

冒頭、夫のアンジェイは妻のクリスティナの下手な運転ぶりを見咎め、彼女を助手席に追いやる。このときアンジェイがクリスティナを見下していることは容易に読み取れる。しかし間もなく車の前に一人の若者が飛び出してくる。「アンジェイ>クリスティナ」という不等式に突如として闖入してきた若者に対し、アンジェイははじめ罵声を浴びせかけるが、ふと落ち着きを取り戻したように彼を車に乗せてやる。それどころか一緒に自家用ヨットで旅をしないかとさえ持ち掛ける。相手が貧乏な学生であることを悟ったアンジェイは、彼に自らのブルジョアぶりを顕示することで先の自分の狼狽ぶりを清算し、「アンジェイ>若者、クリスティナ」という構図を作り上げようと画策するわけだ。

一方で若者はなかなか自身の手の内を明かそうとしない。無論アンジェイに跪拝することもない。関係のイニシアチブは徐々に若者のほうへ傾斜していく。若者が大事そうに持っているナイフという小道具もどこか危うげだ。かと思いきや若者がカナヅチで泳げないことが発覚する。それを知ったアンジェイは彼を海に突き落とすフリをして再び優位に立つ。その後もアンジェイと若者の駆け引きは続き、そこにクリスティナという女性表象=聖杯をめぐるホモソーシャル的闘争のニュアンスも加味されていく。

翌日、上述の通りアンジェイはふとした小競り合いが原因で若者を川の中に突き落としてしまう。しかし若者はいっこうに浮上してくる気配を見せない。アンジェイは泳いで彼を探しに出る。しばらくすると船上で待機していたクリスティナのもとに若者が現れる。彼は実は泳ぐことができたのだ。クリスティナとやっと二人きりになれた若者はいよいよ彼女を手籠めにする。しかしクリスティナは彼に従属するどころか、行為が終わるや否や若者を船から追い出してしまう。毅然とした態度で岸辺に戻っていく彼女を木場から茫然と見送る若者。クリスティナは岸辺に戻ってきたアンジェイとともに湖を後にする。当然アンジェイは若者が生きていることを知らない。クリスティナが「怖がってるんでしょ?」と尋ねる。アンジェイは言い淀んだのちに「怖がってるさ」と白旗を振る。すったもんだの駆け引きの果てに当初の関係性の不等式は完全に逆転してしまったというオチだ。冒頭と同じ車中のショットで冒頭とは真逆の情けなさを露呈させるアンジェイに思わず笑ってしまう。

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因果

4.0バカの二乗

2023年6月5日
iPhoneアプリから投稿

人を制御しようとしたり、見下したり、マウントしたり、場を回したがる老男。落ち着きなく、止まって考えることのない拙速な若男。共に結果にコミットすることなく、しでかしたことに臆病に怯える。

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Kj
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