劇場公開日 2023年6月16日

「人でなしの恋」ペトラ・フォン・カントの苦い涙 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人でなしの恋

2023年11月6日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

1972年のライナー・ヴェルナー・ファスピンダー監督作品。
ファスピンダー監督はドイツ人。ドイツ語の映画です。
2022年にフランソワ・オゾン監督が『苦い涙』としてリメイク。
オゾン監督は主役を女性のファッション・デザイナーから、
男性の映画監督に変更しています。
ファスピンダー監督は37歳で亡くな理ましたが、
15年間で44本も映画を撮ったし
演劇作品も多数残した天才でした。

女性が主役ですので、もしや女性監督では?と思いましたが、
違いました。
内容はほぼ同じ。台詞の多くも同じです。

同性の若い女に溺れて自分を見失う35歳の若い母親でもある
ペトラ・フォン・カント。
恋は盲目。
何故、そんなにもカリンに惚れ込んだのか?
リメイクにはないのですが、カリンは生い立ちを語るのです。
「ご両親は?」と聞くペトラに、
「父が母を殺して首を吊った・・・」と話す。
「この話を告白すると嫌われる」と言うカリンに
「もっと好きになった」とペトラは答える・・・このやり取りに
鍵があるのかも知れませんね。
やがて男遊びをして外泊したり、束縛を嫌うようになり、
なんと別れたと言っていた夫から電話が来る。
そしてハンブルクに経ったカリンは2度と帰ってこなかった。
(ファッションモデルとして成功しているらしい・・・
(と噂が・・・)
映画のラストの方でペトラの35歳の誕生日に、娘のガビや母親そして
女優のシドニーが祝いに現れる。
カリンからの電話をひたすら待っているペトラは、もう娘も眼中にない。
(外国で高い寄宿学校に入れるのは程の良い育児放棄のようなもの)
この場でのペトラの荒れ方、
罵詈雑言にガラスの食器を叩き壊す、壁にぶつける。
娘を傷つける言葉・・・人間失格・・・恋でその人の本質が見える。

ラストもちょっとだけオゾン作品と違います。
助手のマレーネはペトラから、
「あなたがこれから私のパートナー、
「あなたの話しを聞かせて・・・」と声を掛けられる。
マレーネが歩み寄って手を握ると「それはやめて」と拒絶される。
マレーネは愛されてないことを悟ったのでしようね。
荷物をまとめて出て行きます。
そこで暗転して、終わります。

映画の最初に、
【ある病歴】
「本作でマレーネとなった人物に捧ぐ」
と文字がでます。

マレーネを酷い目に遭わせたのを監督も意識していたのですね。

琥珀糖
Gustavさんのコメント
2023年12月24日

琥珀糖さん、「アマデウス」の共感ありがとうございます。
この映画は、1979年のヤクルトホールの西ドイツ映画祭で観ました。映画タッチが独特で面白かった記憶があります。その後「マリア・ブラウンの結婚」に感心しましたが、今年見直して演劇的な演出に感服しました。個性が際立つドイツの演出家ですね。

Gustav
ミカさんのコメント
2023年11月6日

ヒリヒリとした痛みがシュールに表現されていたと思います。ファスビンダー 作品を劇場で鑑賞できるだけでも幸せでした。

ミカ
talismanさんのコメント
2023年11月6日

こちらもご覧になったんですね!さすが!オゾンと同じだけど全然違いますよね。男の方が性への傾倒というか迫力が濃厚で強くてしつこい。で、甘ったれ、なかなかふっきれない感じがしました

talisman