劇場公開日 1998年9月26日

「ミラー大尉の生き方の美学を感じる」プライベート・ライアン 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ミラー大尉の生き方の美学を感じる

2024年1月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

主人公のミラー大尉はただ命令をこなすだけの軍人では無い。彼は生き方について自分なりの美学を持っており、大局を理解している。敵を避けて通れるにも関わらず、それでは後から来る味方が困るからと、敵を排除するために戦う。本来のライアン捜索の任務を完了しても、あえて現地に残って命がけでドイツ軍と戦う。それは、ミラー大尉が、自分達軍人の役割は戦争を終わらせることにあるという本質を深く理解しているからだ。軍人の役割は戦争を終わらせることにあると頭で分かっていても、実際の戦争は命がけなので中々有言実行できることでは無いはずだ。綺麗事に終わらないのが彼の凄いところで、考えから行動まで筋が通っていて、人としての厚みを感じる。

冒頭のノルマンディー上陸作戦の凄惨な描写は、他の戦争映画ではあまり見られないほど作り込まれていて見事。大軍が衝突し、銃弾が飛び交い、火炎放射でトーチカの中に居る兵士を焼き殺す。戦う前に撃たれてあっけなく死んでしまう兵士も数多く居る。それが戦争の惨さを伝えると同時に、迫力があり観ていて面白い。ただ、それ以降のストーリーは冗長な印象。2時半超えは長すぎて内容に見合っておらず、もっと短縮できたはず。そのためミラー大尉の人間的な魅力と、冒頭のノルマンディー上陸作戦が今作の見どころという印象になった。

根岸 圭一