劇場公開日 1974年11月2日

「アメリカの歪みが生み出した狼」狼よさらば 柴左近さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5アメリカの歪みが生み出した狼

2021年5月19日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

興奮

経済が発展するにつれて、開拓精神、自衛本能を失っていったアメリカ人。
犯罪は横行し、それを取り締まる警察や司法はパンク状態。悪漢に愛する者を奪われた者たちの傷は、癒えることなく深くなる一方だ。

しかしそこは我らがマンダム、ブロンソン。やられっぱなしじゃいられねぇ!銃を手にした彼は、街に巣食う悪漢共を片っ端から粛清していく。
それは単なる復讐心からだったかもしれないが、段々と私情を離れ私刑という行為自体にのめり込んでいく。
正義のヒーローとは言えない主人公像だが、これが当時大衆に受けたのは納得。

展開は、めちゃくちゃわかりやすい。
登場人物の台詞も説明臭く、社会への不満が溢れている。少々くどくてB級感半端ないが、ブロンソン演じるポール・カージーのバックボーンがしっかり描写されていたり、時代がしっかり反映された内容、ハービー・ハンコックの音楽のお陰で他の70年代のB級アクションとは一線を画す。

なんといってもいぶし銀のブロンソンが絵になる。全く説得力のない不動産屋という設定も全然気にならない。とにかくカッコいい。
言い方が悪いが、スター俳優はB級映画と相性が良い気がする。脚本が優れているに越したことがないのは確かだが、多少安っぽいストーリーでも分かりやすくカッコよくスターを活躍させてくれた方がファンは喜ぶし、なんせスターは脚本の穴を埋める力があるからだ。
ブロンソンは正にそんなスターの一人だ。

柴左近