劇場公開日 2023年4月23日

「革命の幻影を抱き続けるフランス人ゴダールの政治メッセージ」中国女 Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0革命の幻影を抱き続けるフランス人ゴダールの政治メッセージ

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画にとって最も重要な映像より、出演者たちから発せられる言論が遥かに鑑賞のポイントになっているゴダール映画。淀川長治氏はロッセリーニとゴダールが映画を壊したと断罪していたが、この映画を観ればその考え方に賛同せざるを得ない。それというのも、作者ゴダールがこの作品で表現したのが、人生論ではなく政治学そのものだからだ。延々と語り述べられる歴史上の偉人の言葉、反資本主義に徹するフランス人の若者のスチューデント・パワーは、けして人間探求の過程へ進展しない。映像は、その抽象的特質のみによって、政治理論のディスカッションの、ほぼバックアップ的効果に終わっている。マルクス・レーニン主義も毛沢東と文化大革命にも共鳴することのない者には、苦痛に近い映画経験である。と云って、政治学について互角に論じ合えれば理想の鑑賞になるのかも、甚だ疑問だ。
芸術の宿命には、古い価値観や様式美を敢えて破壊する時が来る。映画に於けるヌーベルバーグも、その一翼を担う歴史的な意義を持つことに賛同するが、政治かぶれのゴダールには魅力を感じない。ただ、映画制作の真摯さは否定しない。

Gustav