劇場公開日 1978年6月30日

「アメリカ映画の主力になったスペースファンタジーの功罪」スター・ウォーズ Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5アメリカ映画の主力になったスペースファンタジーの功罪

2022年3月28日
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鑑賞方法:映画館

記録的な大ヒットをアメリカで呼び起こし、日本にもそのブームをと期待値が上がったジョージ・ルーカスの待望の新作。スピルバーグ監督の「未知との遭遇」と並んで、SF映画の新境地を切り開くアメリカ映画の威力を痛感する。これにより、アメリカ映画が変わっていくのか。どちらも見世物映画の今日的な娯楽性を備え、映像の迫力を追求した映画には違いない。誰もが持っている童心を刺激して、映画を幅広い世代に観てもらえる商業的成功を目的にしたスケール感と迫力に文句を付ける余地ない。映画産業の在り方として当然の挑戦である。
それでもルーカス監督については、「アメリカン・グラフィティ」で見せた、音楽と映像による青春回顧の映画的な演出の素晴らしさに酔えた経験がある。それとは完全に世界観を変えた、この映画は、サイエンスフィクションというより、スペースファンタジーが合っている様に感じられる。宇宙空間の特撮シーンの素晴らしさ、ロボットのC-3POとR2-D2のユニークな創造性、そして古代英雄劇を再現したような分かり易いストーリーテリングと、これからの宇宙時代に夢見る科学の発展を願う想像力に溢れている。それ以上に、宇宙レストランかバーかに集まった様々な姿形をした宇宙人を観て強く感じた。このシーンがこの娯楽映画の特徴を端的に表していると言えるだろう。

  1978年 8月16日  郡山ピカデリー

この映画が日本公開された1978年は、色んな意味で映画の多様化が明確に進んだ年であったと思う。一つはルキノ・ヴィスコンティ監督の「家族の肖像」のヒットにより、ヨーロッパ映画主力のミニシアターの存在が注目され、地味な芸術映画の公開の場が確立したこと。もう一つは、ベトナム戦争後の平和がもたらした男女平等の価値観が流布され、女性映画の良作が沢山制作されるようになったこと。映画はサイレント映画時代から男性優位の世界だったが、第一次世界大戦、第二次世界大戦、そしてベトナム戦争を経て、漸く戦争の無意味さに気付いて、生活に密着した平等や差別にたいする壁を取り払おうと、女性の視点から映画を作れるようになった。反対に男性向け映画は、スピルバーグとルーカス、この二人の巨人の商業映画に席巻されるようになる。この功罪は大きく、負の遺産としては、大人の男性が見るべき映画が少なくないにも関わらず、映画を観なくなったことが挙げられる。それは、特に日本で顕著な現象として今日まで続いていると思う。仕事に忙しく、他に娯楽が増えたことが最大理由だろうが、かつての映画の一期一会の感動に浸ることより、現実にある問題に直面するリアリティに心を砕く精神的余裕が無くなっているのではないだろうか。戦後の高度成長期にある大らかな男性社会とは違うもの、それに替わる新しい男性映画が生まれてもいい頃だと思うのだが。

Gustav