司祭

劇場公開日:

解説

カトリックの司祭でありながら同性愛者である青年の苦悩を描いたシリアス・ドラマ。教会と同性愛という現在欧米各国で政治的な争点となっている問題を始め、教会の権威主義、信仰層の政治的保守化、さらには告悔の秘密厳守というカトリックの司祭にとっての絶対の原則まで俎上に乗せたため、公開された各国で激しい議論や抗議運動を引き起こし、ついにはローマ法王庁から抗議声明まで発表された。監督は舞台女優、舞台とテレビの演出を経て、これが劇映画第1作になる女性監督アントニア・バード。彼女は本作の成功でアメリカに招かれて「マッド・ラブ」を監督した。脚本は人気テレビ・シリーズ「Crackers」で知られるジミー・マクガヴァーンで、自身がカトリックの寄宿学校で育った彼のライフワークでもある。主演は王立シェイクスピア劇団などで活躍する英国演劇界の若手のライナス・ローチで本作が映画初主演。共演は「父の祈りを」のトム・ウィルキンソン、「モナリザ」「ゾンビ伝説」のキャシー・タイソン、「リフ・ラフ」のロバート・カーライルほか。ベルリン映画祭国際批評家連盟賞ほか各賞を受賞し、各国で論争を巻き起こしながらヒットを記録。

1990年製作/109分/イギリス
原題:Priest
配給:セテラ・インターナショナル
劇場公開日:1996年6月15日

ストーリー

リヴァプール。労働者区域の教会に熱意に燃える新任司祭のグレッグ(ライナス・ローチ)が着任した。だが主任司祭マシュー(トム・ウィルキンソン)はリベラル派で、左翼的な説教をして保守的なグレッグを驚かせる。しかも彼は司祭館の家政婦マリア(キャシー・タイソン)と愛人関係にあった。労働者階級の厳しい現実を前にグレッグの自信は揺らぎ、彼はゲイバーで出会ったグレアム(ロバート・カーライル)との激しい肉欲に身を任せる。行為の後グレッグは罪の意識に急いで立ち去るが、グレアムは彼を愛し始めていた。グレッグは告悔で高校生のリサ(クリンティーン・トレマルコ)から父に犯されているという告白を聞く。だが告悔の内容を漏らすことは許されない。リサの父(ロバート・プー)は近親相姦は自然な行為だとうそぶく。グレッグは慰めを求めてグレアムとデートするようになる。グレアムが彼のミサに来るが、グレッグは彼に聖餐を与えることができない。彼が懸命に神に祈っていたある午後、リサの母(レスリー・シャープ)がたまたま早く家に帰って夫が娘を犯しているのを目撃する。彼女はなぜ教えてくれなかったと彼を非難する。絶望したグレッグはグレアムに会い、二人は車の中で愛を確かめ合う。そこに警察が通りかかったためにグレッグの同性愛は裁判沙汰になってしまった。彼は自殺未遂の末に僻地の教会に転任させられた。その間もマシューは偏見に目を曇らせてはならないと説教を続け、またグレッグを訪問して負けてはならないと説得する。始めはマシューのリベラリズムを拒否していたグレッグだが、その飾りけのない誠意に、ついに彼と一緒に祭壇に立つことを決意する。日曜日のミサ、一部の信者は怒って席を立ったが、それでもかなりの人が残った。だが聖体拝受をグレッグから受けようとする者はいない。そのときリサが黙って彼の前にたち、彼の差し出す聖餐を受けた。グレッグは彼女を抱きしめ、許しを求めて涙を流すのだった。

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映画レビュー

3.5同性愛者の司祭の信仰と欲望の自己葛藤の真面目な映画

2021年2月5日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ロンドンの下町の貧しい地域の司祭として赴任した若き青年の信仰と欲望の自己葛藤映画。そこから生まれる時代の正義を見詰めた真面目な作品。同性愛者故に地域の人達から反発を受けるが、主人公に自責の念がそれほど感じられない点は、流石イギリスという国を表している。近親相姦に苦しむ女子高校生を救おうとして救いきれない司祭の限界と、自分の努力が正当に評価されないジレンマが交差する。地味な映画だが、ヒッチコックの「私は告白する」と類似するところもあって考えさせられた。

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Gustav
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