私家版

劇場公開日:

解説

小説の贋作を武器に、完全犯罪に挑んだ男の復讐劇を描いた心理ミステリー。仏ローザンヌ大学の歴史学教授であるジャン=ジャック・フィシュテルの同名処女小説(邦訳・東京創元社)で、フランス推理小説大賞など数々の賞を受賞した作品を映画化。監督・脚本にはジャーナリスト出身でニュース・キャスターとして有名なベルナール・ラップが当たり、初めてメガホンを取った。潤色・台詞は、ラップと作家リシャール・モルジエーヴの共同。撮影は「恋愛小説ができるまで」のロマン・ウィンディング、音楽は「愛しのエレーヌ」のジャン=フィリップ・グード衣裳は「パトリス・ルコントの大喝采」のアニー・ペリエ。主演は「プリシラ」のテレンス・スタンプ。共演は「厚化粧の女」のダニエル・メズギッシュ、「パルプ・フィクション」のマリア・デ・メデイルシュ、「ロスト・チルドレン」のジャン=クロード・ドレフュス、「三銃士」のフランク・フィンレイ、「エレファント・マン」のハンナ・ゴードンほか。

1996年製作/84分/フランス
原題:Tir'E'APart
配給:アルシネテラン
劇場公開日:1997年12月20日

ストーリー

エドワード(テレンス・スタンプ)はサーの称号を持つ英国紳士で、有能な編集者。ニコラ(ダニエル・メズギッシュ)は礼儀知らずのフランス人にして、派手な暴力小説を得意とする三文作家。二人は30年来の友人だった。ある日、エドワードはニコラが自分自身の過去を投影して書いた私小説「愛に生きて」の原稿を読まされる。明らかにこれまでのニコラのスタイルとは異なり、感動的であるが、彼はそこからある恐るべき事実を読み取る。それは30年前の悪夢。エドワードの恋人が自殺したのは、ニコラに犯されたからだった。彼はニコラの小説の舞台であり、恋人を失った場所であるチュニジアへ旅立つ。恋人の妹ヤスミナ(ユゲット・マイヤール)とその娘、かつての恋人と同じ名前を持ち、生き写しのような風貌を備えたファリダ(アミラ・カザール)が、傷心のエドワードを迎えてくれた。昔と変わらぬ美しい風景、二人の慰めの言葉がかえってニコラへの憎しみを募らせていく。文学賞作家を輩出することで有名なパリの出版社に赴き、主宰のレカミエ(ジャン=クロード・ドレフュス)にニコラの新作の出版を勧め、エドワードは着々と「愛に生きて」が文壇の脚光を浴びる道標を作っていく。同時に、今は亡き一人の作家と戦争で消滅した出版社に目をつける。友人に頼まれた贋作つくりに便乗して一冊の小説を書き、それを私家版の本「チュニジアのロマンス」に仕立て上げる。ニコラの「愛に生きて」は、フランス文学で最も名誉ある賞を受賞。本はベストセラーとなり、ニコラはレカミエに法外な報酬を要求した。周りの誰もがニコラの横暴さに辟易し始めた頃、辛辣な評論家として有名なナンシー(マリア・デ・メディルシュ)に一冊の本が届いた。戦前に出版されたアーウィン・ブラウンという無名の作家の「チュニジアのロマンス」という作品で、ニコラの「愛に生きて」と文体も内容もほとんど同じだった。かつてニコラの恋人で、個人的な恨みを抱いていたナンシーは早速、盗作スキャンダルとしてマスコミにこの情報を流す。ナンシーの陰謀だと激怒し、訴訟を興すニコラ。しかし、「チュニジアのロマンス」の現物を前に、彼は狼狽する。あまりの類似と、たった一か所の相違。それはニコラが事実を歪曲して書いた部分で、チュニジア娘が主人公を愛しているが、ブラウン版では主人公がチュニジア娘を犯すとなっていた。作家生命の危機にさらされたニコラは、思い余って30年前の罪をエドワードに告白。法廷での対決の日。盗作と主張するナンシー側、ブラウン版こそ贋作だと主張するニコラ側。果たして専門家の鑑定結果は、ブラウン版は紙質・インク・糊など全てにおいて疑問点はなし。さらに、証人として関門されたナンシーは、彼が11年前の交通事故の後遺症で「一時的記憶喪失」になった過去があると語った。専門家の見解では、ニコラがブラウンの本を読んだあと、一時的記憶喪失になったのではないかと言う。驚愕したニコラは、エドワードに「あんただけは僕を信じてくれるだろう」と哀願する。だが、彼は自分の書斎の膨大な蔵書の中から「チュニジアのロマンス」を発見する。もちろん、エドワードが隠しておいたものだ。帰宅したエドワードは、レカミエからの留守番電話で「ニコラが書斎で自殺した」との報せを聞くのだった。

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