劇場公開日 2000年10月14日

「不倫のライバルは“神様”」ことの終わり KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5不倫のライバルは“神様”

2020年7月27日
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各場面の時間の前後が判りにくく、
この情事は、
このレストランシーンは、
等々いつのことなのか、
最初は理解に苦しんだ。
改めて原作本を読んで、また映画を観た。
そう、難解だが魅力ある作品だったから。

原作には映画とは異なる箇所がかなりある。

リチャードという神父は登場せず、
同じ名前の男性は信仰という意味では
真逆の演説家。

そして顔に痣があるのは
探偵の子供ではなくこのリチャード。
だからラストで消えるのはリチャードの痣。
もちろんサラのキスが前提。
ただ、電気治療の結果かも、と曖昧。

このことが演説家の信仰心を芽生えさせる
奇跡に繋がったかについても、
彼から話を聞く前にベンドリックスが
電話を切ってしまったので曖昧のまま。

一方、子供の方は痣ではなく
腹痛の持病があるが、
親切だったサラを強く思うことで
好転するとの話が出てくる。

サラが神に誓いを立ててからは、
結果論的ではあるが辛うじて映画のような
ヘンドリックスとの情事は無い。

映画でははっきりとは描かれないが、
原作では、サラの死は自らが望み、
神に依頼した結果のように表現されている。

話の終盤、ヘンドリックスと共にサラを
看取る場面、原作ではヘンリーだけだ。
また一緒に住むのはサラが亡くなってからだ。

と、脚本でかなりの改変がなされている。

ニール・ジョーダンの脚本、
テーマを曖昧にしかねない誓い後の情事や
終盤の旅行の場面が蛇足的に感じ、
この部分は若干のマイナスだが、
原作よりも因果関係がスッキリした感があり、
全般的には優れた変更だったと思う。

神とは本来、人間からは超越した存在で、
サラも最後にその神に身を委ねたのに対し、
ヘンドリックスは
自分とは異なる人生観を持つ反対論者
のように神を捉える。

ヘンドリックスは
グリーンの化身なのだろうか。

KENZO一級建築士事務所