劇場公開日 1989年2月18日

「禁じられたマリエ」告発の行方 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0禁じられたマリエ

2021年5月15日
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鑑賞方法:DVD/BD

興奮

知的

幸せ

マリエと出川哲郎の騒動で何故か真っ先に思い出したのはこの作品

88年の作品
10代のときに日曜洋画劇場で初めて観て以来VHSにDVDで3度目の鑑賞
日曜洋画劇場は当時何故か妹と母と観る羽目になった
居た堪れないこの世の地獄であった
レイプに対する強い嫌悪感はこの映画が影響している
久しぶりに観た名作
ジョディー・フォスターの代表作
好きだったなあジョディー・フォスター
男ならマイケル・J・フォックスで女ならジョディー・フォスター
本物のハリウッドスター
アメリカの知性そのもの
彼女の演技力が光る

司法を舞台にした名作は数多くあるがそのうちの一作
レイプものというジャンルが映画にもあるならこれは最高傑作
レイプに対する被害者側の復讐劇だがB級にならないのは司法に訴えて勝つからだろう
レイプを扱っているのに不謹慎だが面白い
『ガリレオ』で福山雅治演じる准教授が柴咲コウ演じる刑事に抗議を受けたようにお叱りを受けそうだが実際に面白いんだから仕方がない
脚本演出さらに役者の皆さんの演技力が素晴らしい

被害者は決して清楚な女性ではない
マリファナはやるわ公で卑猥な爆弾発言するわ泥酔して酒場で扇情的なダンスするわ確かにふしだらな女かもしれない
だからといってレイプをして良いわけではない

担当する女検事は狡猾な弁護側に負け司法取引でレイプではなく過失傷害という比較的軽い罪で有罪を勝ち取る
しかしそれでは納得いかないヒロイン
今度はレイプを煽った周りの男たちを教唆の罪で訴えることに

被害者の人物像や事件現場の環境も手伝って訴える側は圧倒的に不利
そこからの逆転劇が痛快
最後に正義は勝つという単純明快さ
しかし6人に1人は後味が悪い
社会派の名作

最近のハリウッド映画と違い「FUCK」の使い方が絶妙
女検事に不満をぶちまける台詞は不適切だと思うがまるで叙事詩のようだ
最近のハリウッドはカッコいいと思っているのか「FUCK」の乱用が酷すぎでメリハリというものがない

司法のやりとりだけでなくレイプも詳細に描く衝撃作
ジョディー・フォスターは所謂俗に言う「体当たり演技」でバストを露にしている
しかし彼女のオッパイより男たちの生尻の方が強く印象に残る
白人男性の生尻というとプロレスラーのディック・マードックを思い出す

レイプを煽る応援団長のいやらしい顔も印象的だ
蠍のタトゥーのあの男だ
男がふざけてトラックで道を塞ぐのだがそこに赤い車を運転するヒロインが怒りのあまり思いっきり激突して大破するシーンも若い頃から強く記憶に残っている

こうしてみると芝居というものは脚本や演出も大事だが出演者の演技力も重要である
目立ちたがり屋のズブの素人をかき集めてみても名作は生まれない

その点ではマリエは完全なミスキャスト
MeToo運動の広告塔にも好感度が必要だ
マリエを煽る活動家はアメリカで勝利を掴み取った被害者とマリエを同一視する反面で日米の対応の違いに嘆く笑止
マリエからすれば自著の本が売れたら良いわけであわよくば文化人として芸能界の表舞台に復帰できればの思いもあり活動家の応援はありがた迷惑かもしれない
マリエ応援団のたかまつなな某とか牧野洋某とか自称ジャーナリストは取材で裏付けすることなく憶測でネット記事を書くがあんなものはヤフコメ民の延長線に過ぎない
裁判は面倒だというマリエの発言を曲解している
宮沢賢治も訴訟はつまらないからやめろと言っているので軽々しく第三者が法廷闘争を煽るのは良くないかもしれない
マリエもレプロだがあの事務所はまともにマネージメントできないのか

野川新栄