劇場公開日 1998年2月13日

「ギレルモ・デル・トロの吸血鬼」クロノス 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ギレルモ・デル・トロの吸血鬼

2022年12月11日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

ギレルモ・デル・トロの監督デビュー作。1993年の作品。

映画監督のデビュー作って、鮮烈なデビューか、コケるか、すでにもうその後のスタイルが確立されているかのいずれかに分かれる。
デル・トロの場合、後者。
中世時代の謎の機械によって不老不死の吸血鬼となってしまった老人。
売れっ子となった今のデル・トロが手掛けても、デル・トロらしい!…と思うだろう。
独特のホラー×ダーク・ファンタジーは、最初から専売特許。

垣間見える後の片鱗も興味深い。
“クロノス”と呼ばれる謎の機械。金時計のような形から針が出て虫のような形になり、刺されると不老不死の吸血鬼になる。
凝った作り。“虫”は『ミミック』。“吸血鬼”は『ブレイド2』。
主人公の老人役の俳優は『デビルズ・バックボーン』にも出演。
無垢な孫娘。無垢な少女は『パンズ・ラビリンス』に通じる。
無垢な者と異形の者の交流は『シェイプ・オブ・ウォーター』。
そして、この頃から出演していたロン・パールマン。
ここまでブレないデル・トロって、自分にこだわりを持っててスゲェ…。

話は独特の雰囲気ではあるが、ホラーやダーク・ファンタジー色が強いというより、主人公の老人の悲劇が描かれている。
不老不死の吸血鬼になった事により、若返ってもいく。
と同時に、苦しめられる血への渇望。
醜い容姿になっていく。
“クロノス”を狙う富豪。甥に奪うよう命じる。疎ましく思う甥。エゴや憎悪。
暴力で襲撃される。不老不死故、死にはしない。が、痛みは感じる。
老人の苦しみ。
孫娘の無垢な眼差しが痛々しく突き刺さる。
ダークで悲劇的な作風は『ナイトメア・アリー』にも通じる。

謎を残したままなのも不思議な余韻残る。
あのラストは…? 老人の末路は…?
そもそも、“クロノス”とは…?
ギレルモ・デル・トロはデビューから只者ではなかった。

近大