劇場公開日 2022年6月18日

「母への愛とマリア信仰」奇跡の丘 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0母への愛とマリア信仰

2022年6月22日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

幸せ

カトリックはマリア信仰だと実感させられた。処女懐胎のマリアの不安げな美しさ。うろたえるヨセフに天使が告げる言葉。納得し歓びと共にマリアのもとに戻るヨセフを見て小さく微笑むマリアの安堵の顔。そしてよくもまあ美しく静謐で限りなく優しい、皆が自ずと慕わざるを得ないイエス役の青年をパゾリーニは見つけ出したものだ!

罵られるイエスを見つめる老いた母マリア(パゾリーニのお母さん!)の深い悲しみ。マリアにとってイエスは神の子ではあっても愛する息子だ。そのマリアに心打たれ、復活を確信して喜びに溢れたマリアの表情には胸がいっぱいになった。マタイによる福音書を淡々となぞるが焦点はマリア。プロテスタントだったら描き方は異なっただろうと思う。「ジーザス・クライスト・スーパースター」は異なる。映画でもミュージカルでも見たけれど全く異なる。

バッハのマタイ受難曲の特に美しい箇所が効果的に使われていた。そしてキャスティングだけでなく、適切なロケ地を探し出すパゾリーニのセンスは見事としか言いようがない。彼がマテーラを発見したのは、マテーラが「イタリアの恥」と呼ばれる以前だったのだろうか、それとも既にそう呼ばれていた頃なのだろうか?

talisman