劇場公開日 2012年11月3日

カリフォルニア・ドールズ : 映画評論・批評

2012年10月31日更新

2012年11月3日よりシアターN渋谷にてロードショー

アルドリッチの集大成ともいえる血沸き肉躍る女性アクション映画の傑作

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ロバート・アルドリッチは数多くの痛快無比な男性アクション映画といくつかの忘れがたい異常心理風な女性映画によって映画史にその名を刻んでいる。30年ぶりにリバイバルされる遺作「カリフォルニア・ドールズ」は、そんな彼の集大成ともいえる血沸き肉躍る女性アクション映画の傑作だ。山っ気たっぷりのマネージャー、ハリー(ピータ・フォーク)と成功を夢見る女子プロレスラー、アイリス(ビッキー・フレデリック)とモリー(ローレン・ランドン)はタッグを組み、オンボロ車で巡業の旅を続ける。

なによりも美貌と見事なプロポーションを誇示するふたりの肉体が躍動するレスリング・シーンがすばらしい。一方で、中西部に点在する煤煙にけぶる工場街を車が走り、そのさびれた風景の中に、ハリーが愛聴するイタリア歌劇「パリアッチ」のアリアが朗々と響き渡る、物悲しさはまさに絶妙だ。

しかし、ギャラも底をつき、裸が売りの泥レスショーまでやらされたロリーは泣きじゃくり、黄金カードの契約実現のために悪徳興行師と一晩寝るという選択をしたアイリスもシャワー室で悔し涙を流す。この映画では女たちが安モーテルの一室で嗚咽するシーンが際立って深い感銘を与えるのだが、彼女たちの無念と屈辱を一気に晴らすのがリノのMGMホテルで行われる試合のクライマックスである。

名作「バンドワゴン」の主題曲「ザッツ・エンターテインメント!」が流れ、リングのマットに描かれたMGMのライオンマークが俯瞰で映し出されるや、そのあまりにストレートなオマージュにかえって胸が熱くなってしまう。そして、満艦飾のド派手な衣装に身を包んだふたりが登場した瞬間、会場は奇跡のような祝祭空間へと変貌するのだ。

高崎俊夫

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